トランプ関税下でも中南米は市場や生産拠点としての魅力維持、進出日系企業実態調査
(中南米、アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ、チリ、日本)
調査部米州課
2025年12月23日
ジェトロは12月23日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(中南米編)」の結果を発表した(注1)。
2025年の営業利益見込みは、中南米全体で70.9%が黒字と回答した。特に、ブラジルで76.5%が黒字と回答し、過去最高となった前年からは減少したものの、高い水準を維持した。アルゼンチンが74.5%と2番目に高く、営業利益見込みのDI値(注2)でもプラスに転じた。今後1~2年の事業展開の方向性でも、「拡大」を見込む企業の割合はブラジル(64.3%)とアルゼンチン(64.0%)が中南米の中でも突出して高かった。ブラジルは引き続き内需が旺盛との見方が多く、営業利益見込みの改善理由では「現地市場での需要増加」との回答が66.7%に上った。アルゼンチンでは、2023年末に発足したミレイ政権によるマクロ経済政策や規制緩和などの取り組みによるビジネス環境の改善も後押ししたとみられる。
米国向け輸出が多く、トランプ関税の影響を受けやすいメキシコにおいても、黒字割合は68.8%、事業拡大を見込む企業の割合も45.2%と前年度並みを維持した。ただ、DI値が前年比27.7ポイント減の0.6ポイントとなったほか、米国関税の影響を聞く設問では、48.9%がマイナスの影響があると回答するなど、影響を受けている企業が一定数あることもわかった。
米国の追加関税措置への対応策としては、現地調達化や米国を経由しない輸入ルートへの切り替えなど、影響を軽減させるためのサプライチェーンの組み替えを実施・検討する動きがみられた。メキシコでは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の活用に積極的な企業も多かった。
競争環境としては、進出先市場での最大の競争相手が中国企業と回答した割合が最も高く、特にペルーでは64.3%と顕著だった。中国企業を最大の競争相手と考える理由としては「コスト競争力」との回答が最も多い。これに対して、「製品・サービスの多角化」や「営業・広報の強化」など、価格以外に特色を打ち出そうとしている企業が比較的多かった。
投資環境面のメリットとしては、全ての国で市場規模・成長性を挙げる企業が最も多かった。デメリットとしては、「行政手続きにおける遅延や煩雑さ」との回答が目立った。人材獲得競争の激化や、それに伴う人件費上昇に苦慮する企業も多くみられた。
人権尊重の取り組みでは、中南米全体の人権デューディリジェンス(DD)の実施割合が2年前から増加しており、全世界平均よりも高い結果となった。
(注1)2025年8月20日~9月26日にかけて、中南米(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラ)に進出する日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店)745社を対象に実施(有効回答率56.4%)。
(注2)営業利益見込みが前年比で「改善」する企業の割合(%)から「悪化」する企業の割合(%)を差し引いた値。
(加藤遥平)
(中南米、アルゼンチン、コロンビア、ブラジル、ベネズエラ、ペルー、メキシコ、チリ、日本)
ビジネス短信 39422390c7cbe564




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