11月の米雇用統計、労働市場の継続的な減速傾向を示唆

(米国)

ニューヨーク発

2025年12月18日

米国労働省は12月16日、11月の雇用統計を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回の雇用統計では、政府閉鎖に伴い公表が遅れていた10月分の結果の一部が合わせて公表されている(注1)。

11月の失業率は4.6%となった(注2)。9月時点と比較すると、就業者数が9万6,000人増、失業者数が22万8,000人増となり、労働参加率は0.03ポイント上昇し62.5%だった(添付資料表1、図1参照)。失業率の水準としては2021年9月以来の高水準だ。広義の失業率(注3)も8.7%と9月の8.0%から上昇した。平均失業期間は23週(9月24.1週)と短縮されたように見えるが、これは新規失業者が増加したことも影響しているとみられる。同時に失業期間が27週以上の者も増加しており、再就職が困難となっている状況も見受けられる。なお、失業率を年齢別にみると、16歳から24歳の若年層が10.6%(9月から0.2ポイント上昇)、25歳から54歳までのプライムエイジが3.9%(同0.2ポイント上昇)、55歳以上が3.1%(同0.2ポイント低下)だった。

非農業部門の新規雇用者数は10月が10万5,000人減、11月が6万4,000人増だった。なお、8月は4,000人減から2万6,000人減に、9月は11万9,000人増から10万8,000人増に、それぞれ小幅に下方改定されている。3カ月移動平均でみると、雇用者数の伸びは2万2,000人増にとどまっており、ダラス連銀が発表しているブレークイーブン雇用(注4)の値外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(約3万人)よりも下回っている。

もっとも、10月の雇用者数の減少はほとんどが政府閉鎖時になされた早期退職プログラムの影響によるものとみられ、同月は政府部門が15万7,000人減となる一方で、民間部門は5万2,000人増となっており、見た目ほど大きく減速しているわけではない。また、11月も同様に政府部門の5,000人減に対して、民間部門は6万9,000人増となっている。ただし、民間部門で、過去数カ月間、安定的にプラスを維持しているのは教育・医療分野などわずかな業種に限定されており、やや弱さも感じられる(添付資料表2、図2参照)。

平均時給は36.9ドル(前月36.8ドル)で、前月比0.1%増(前月0.4%増)、前年同月比3.5%増(前月3.7%増)と、いずれも伸びが低下し、労働市場の軟化を示すものとなっている。

全体的には、今月の雇用統計の結果は労働市場の減速傾向の継続を示唆するものとなっている。ただし、今月の統計は特に失業率を含む家計調査の数値について、回答率の低下や10月分のデータ欠損を補うための算定方法の調整などいくつかの要因から「通常よりやや高い標準誤差を伴っている」と説明されており、実際にどの程度のスピードで減速しているのかはやや不透明な部分もある。

(注1)雇用統計は失業率などを含む家計調査と、非農業部門新規雇用者数や平均賃金などを含む事業所調査の2種類の統計から成り立っている。このうち、家計調査については、政府閉鎖の影響により10月分のデータが収集できなかったため欠番となっている。

(注2)小数点第2位までの数値で比較すると、今月は4.56%と前月(4.44%)から0.12ポイントの上昇となる。

(注3)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。

(注4)労働市場の均衡を維持するために必要な最低限の雇用増加数を指す。具体的な水準は国や時期により異なり、ここで示された「約3万人」はダラス連銀が算出した米国の2025年半ばの推計値。

(加藤翔一)

(米国)

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