インド政府、新労働法を施行

(インド)

ニューデリー発

2025年12月04日

インド政府は11月21日、同日付で新たな労働法を施行したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。英国統治時代の1930年代から独立後の1950年代にかけて制定された従来の29の労働関連法を合理化し、2019年賃金法(Code on Wages, 2019)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2020年労使関係法(Industrial Relations Code, 2020)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2020年社会保障法(Code on Social Security, 2020)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2020年労働安全・衛生・労働条件法(Occupational Safety, Health and Working Conditions Code, 2020)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の4つに集約した。当初は2021年4月に新法が施行予定だったものの、労働組合などからの反発が大きかったため延期されていた。今回の施行にあたっては、運用範囲などが一部変更された。

2019年賃金法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、1936年賃金支払い法(Payment of Wages Act, 1936)など賃金や賞与に関連する既存の4つの法律を集約したもの。新たな法律では、全国一律の最低賃金が設定され、州政府はこの水準以上の最低賃金を定める必要があることから州ごとの賃金格差が縮小する見込み。また、性別による賃金の区別が禁止され、同一労働同一賃金の順守が義務化された。

2020年労使関係法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、1926年労働組合法など労働組合や労働争議などに関わる既存の3つの法律を統合したもの。本改正により、 政府の許可なしに解雇・退職・閉鎖が認められる企業の従業員規模が、従来の100人未満から300人未満に引き上げられた。また、すべての産業において、ストライキ開始の14日前に事前通知を行うことが義務化された。

2020年社会保障法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、社会保障関連の既存の9つの法律を統合したもの。フォーマル部門、インフォーマル部門の労働者に加え、デリバリーなど単発の仕事を請け負うギグワーカーも適用範囲となる。変更点の例として、業界にかかわらず従業員20人以上のすべての事業所が従業員積立基金(EPF)制度の対象となった。また、女性の出産や育児にかかる各種手当や休業などの制度が規定された。

2020年労働安全・衛生・労働条件法はPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、1948年工場法など労働環境などに関わる既存の13の労働法を集約したもの。変更点の例として、すべての従業員に対して雇用契約書の交付が求められるようになった。また、女性労働者の夜間勤務が認められる一方で、安全対策が義務化された。

今回の新労働法施行により、在インド日系企業各社は、各種規則・労働環境・女性労働者などの活動内容の見直しといった各種コンプライアンス対応のほか、社会保障費関連の賃金定義変更に伴うコストへの影響評価などを実施していく必要がある。他方で、新労働法には州政府が定める規定が未制定であることなど明確でない点も多く、運用に当たっては不透明な状況がしばらく続くものとみられる。

(丸山春花、サンディープ・シン)

(インド)

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