ドイツ政府、初の宇宙安全保障戦略を策定、2030年までに350億ユーロ投資
(ドイツ)
ベルリン発
2025年12月04日
ドイツ連邦政府は11月19日、初の「宇宙安全保障戦略
」を閣議決定した(プレスリリース
、ドイツ語)。本戦略は、国家防衛および同盟防衛の枠組みの中で、宇宙という側面の防衛計画への体系的な統合を推進し、平時・危機時・防衛事態における民間・軍事の両分野でのドイツの宇宙での行動力を確保することを目的とし、3つの戦略的活動分野を定義。本戦略は国家安全保障戦略(2023年6月22日記事参照)と国家宇宙戦略に基づくものと説明した。
宇宙安全保障戦略では、宇宙が平和的研究の場にとどまらず、戦略的競争と権力拡大の場となっていると指摘。ロシアの対衛星兵器試験やサイバー攻撃、中国の能力拡張とイランや北朝鮮などへの支援を挙げ、衛星停止が消防・警察・物流などに深刻な影響を及ぼすと警告し、こうした脅威への対応には国家全体の取り組みと国際協力が不可欠とした。
3つの戦略的活動分野について、第1の「脅威と危険を認識し、対応策を策定」では、宇宙空間の状況を包括的に把握するため、宇宙状況センターを設置し、早期警戒システムを整備。迅速な小型衛星の打ち上げ(レスポンシブ・ローンチ)や、すでに使用されている宇宙システムの再構成によって、短期間で発生したニーズに対応する「レスポンシブ・スペース」というコンセプトのもと、危機時には迅速に軌道に再投入された能力で失われた機能を補う。第2の「国際協力と持続可能な秩序の促進」では、NATOやEU、国連の枠組みで宇宙の平和的かつルールに基づく利用に取り組む。破壊的な対衛星兵器試験を控えるという政治的公約も明記した。第3の「抑止を構築し、防衛力とレジリエンスを強化」では、宇宙における信頼性の高い防衛能力を備えるとし、戦略的に重要な宇宙技術へのアクセスを確保し、そのために民間の軍事分野におけるイノベーション能力を活用。また、代替の通信・航行能力を備え、宇宙能力の迅速なレジリエンスを備える。
ボリス・ピストリウス連邦国防相は、2030年までに国防省だけで防衛予算から宇宙開発と宇宙安全保障のために合計350億ユーロを拠出することを表明した。宇宙安全保障には、衛星などのドイツの宇宙システムおよび関連インフラの保護を含むとした。
ドイツ国際政治安全保障研究所(SWP)のユリアナ・ズース氏は、欧州全域で防衛投資が増加し、宇宙という分野が新たな注目を集めている状況下で、宇宙は民間と軍事いずれにおいても不可欠で、戦略発表のタイミングはこれ以上ないほど適切と評価した。また、パートナーや産業界と効率的に連携して、適時に成功を収めることが最大の課題とした。
(中山裕貴)
(ドイツ)
ビジネス短信 08bf720607ae90fa




閉じる
