欧州会計監査院、加盟国の廃棄物管理状況を分析、目標達成に向け提言
(EU)
ブリュッセル発
2025年12月11日
欧州会計監査院は11月27日、加盟国の廃棄物管理状況(2014~2024年)を分析し、EUの循環型経済への移行に向けた提言をまとめた報告書を発表した(プレスリリース
)。ギリシャ、ポーランド、ポルトガル、ルーマニアの4カ国をサンプル調査国に選定した。
EUは、廃棄物枠組み指令、包装・包装廃棄物指令(PPWR)、埋め立て処分指令(注)に基づき、一般家庭などから出る廃棄物(一般廃棄物)の管理を強化しているが、加盟国の目標達成に向けた進捗にはばらつきがある(添付資料表参照)。また、廃棄物の発生量は、GDPの拡大に伴い増加傾向にあると指摘した。
サンプル調査国を含む多くの加盟国は、財政的制約、不十分な計画、新規インフラ整備を含む廃棄物管理計画の実施が課題となっている。分別回収は依然として極めて低い水準で、2025年の一般廃棄物リサイクル目標が未達成の恐れがある18カ国は、2023年の報告書で欧州委員会から分別収集の改善を勧告されている。さらに、大部分の加盟国は、市民に課す廃棄物管理費を発生した廃棄物の重量や体積に基づいて計算しておらず、実際の管理費を賄えていないと分析。また、廃棄物に関する規制順守対策の実施が遅れた加盟国に対し、欧州委による違反手続きの開始が遅れたと指摘した。
報告書は上記を踏まえ、次の提言を行った。
(1)循環型経済への移行に向けた主な課題は、リサイクル産業の持続可能性であり、リサイクルのためのインフラ整備、再生資源の利用と市場の創出の重要性を強調した。特にプラスチックに関し、一部の加盟国ではリサイクル施設が不足しており、他の加盟国ではコスト上昇や需要不足、域外からの安価な一次原材料や再生プラスチックの輸入により施設閉鎖の危機に直面している。このため、循環型製品と二次原材料に影響を与える需要側および供給側の課題を特定し、リサイクル事業者へのビジネスモデルの提供などの措置を実施する。
(2)加盟国の廃棄物管理を促すために、実質的な内容を基に加盟国に対する違反手続きを適時に開始し、抑止効果を確保し、進捗を促す。
(3)EUレベルで調和のとれた埋め立て税と焼却税の導入に向け、費用や便益性、実現可能性を評価する。
(注)廃棄物枠組み指令は2025年9月に改正(2025年2月21日記事参照)、PPWRは2025年1月に規則改正(2024年12月20日記事参照)、埋め立て処分指令は2024年7月にそれぞれ改正されている。PPWRの詳細は、調査レポート「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)を参照。
(大中登紀子)
(EU)
ビジネス短信 0506ffe2787862cb




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