ロンドン市、渋滞税を引き上げ、EVも対象に

(英国)

ロンドン発

2025年11月19日

英国ロンドン市は11月13日、渋滞税の改定を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。渋滞税は、市内中心部の渋滞の緩和および環境対策として、中心部の特定区域外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを特定の時間帯(注1)に通行する自動車に課せられている税金だ。現行制度では、前払いで1日当たり15ポンド(約3,060円、1ポンド=約204円)のところ、2026年1月2日からは18ポンドに引き上げられる。

また、現在、電気自動車(EV、注2)は、クリーン車両割引が100%適用され、実質的に渋滞税の対象外となっているが、同日以降は支払い対象に含まれることが決まった。EVの乗用車は25%、商用車や重量物車両(HGV)は50%の割引が適用されるが、自動支払い用のアカウントの作成が必要だ。なお、割引率は2030年3月4日に乗用車は12.5%、商用車やHGVは25%に引き下げられる予定だ。さらに、対象地域の居住者については、車種を問わず現在は90%の割引が適用される居住者割引も改定され、2027年3月1日以降に初めて申請する居住者の場合、割引対象となるのはEVのみとなる。

ロンドン交通局(TfL)は今回の改定がなければ、対象区域の平日の対象時間内に、平均で2,200台以上の追加車両が走行する可能性があると試算。交通量が増加すれば、渋滞や遅延が増加し、ロンドン市の経済や企業活動、バスの運行、その他の重要サービスに悪影響を及ぼすとともに、大気汚染の拡大にもつながると指摘する。渋滞によるロンドンの年間損失額は、2024年に38億5,000万ポンドに達したとしている。

サディク・カーン市長は、市民と企業がより持続可能な移動手段を利用できるよう支援するため、より環境に配慮した車両への切り替えを行うロンドン市民に対して、引き続き充実したインセンティブを提供するとコメントした。

ロンドン市は2019年から、市内に乗り入れる、一定の排ガス規制を満たしていない車両に対して通行料の支払い義務を課す区域「超低排出ゾーン(ULEZ)」も設定している(2019年4月10日2021年10月29日2022年12月14日記事参照)。

(注1)平日の午前7時から午後6時および週末・祝日の正午から午後6時。ただし、12月25日(クリスマス)から1月1日(元日)の間は徴収しない。

(注2)英国自動車製造者販売者協会(SMMT)は2025年11月5日、10月の新車登録台数を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。全14万4,948台のうち、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)の合計で、全体の半数(50.8%)を占めた。

(野崎麻由美)

(英国)

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