英国、グリーンランドと貿易協定交渉を再開、重要鉱物で協力強化へ

(英国、グリーンランド、デンマーク)

ロンドン発

2025年10月06日

英国政府は10月3日、デンマーク自治領のグリーンランドと貿易交渉を再開したと発表した。キア・スターマー首相がグリーンランドのイェンス=フレデリック・ニールセン首相、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相とともに、コペンハーゲンで開催された欧州政治共同体の首脳会合に出席したことを受けたもの。

英国とグリーンランドの自由貿易協定(FTA)交渉は2022年に開始され、英国のEU離脱によって終了した無関税貿易の再開が主な論点となっていたが、その後、2024年の英国の総選挙前に中断されていた。

貿易協定が合意に至れば、英国がグリーンランドから年間約7,000万ポンド(約141億4,000万円、1ポンド=約202円)相当を輸入している水産物(エビやタラなど)に対する関税削減につながり、英国消費者の負担軽減が期待される(注)。また、英国はグリーンランドの鉱業権の3分の1を有しており、重要鉱物を巡るサプライチェーン強化に向けた協力も模索している。双方が鉱物資源の共同開発を進めれば、戦略的重要産業の保護や、英国・欧州の長期的な安全保障強化に資するとしている。さらに、英国政府は、デンマーク全域との戦略的パートナーシップを深化させることで、北極圏・北大西洋を含む安全保障と繁栄の確保を目指すとしている。

ロンドン証券取引所(LSE)に上場しているカナダ企業で、グリーンランドで銅やニッケルなどの採掘や探査を手掛けるアマロクのエルドゥル・オラフソン最高経営責任者(CEO)は「交渉再開はグリーンランドの新興鉱業セクターにとって非常によいニュースで、グリーンランドの鉱物資源が世界経済にとって戦略的に重要なことを再確認するものだ」と評価した上で、「これらの必須資源の持続可能なサプライチェーン構築に向け、英国との協力を期待している」と述べた。

(注)英国ビジネス・通商省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(DBT)によると、2024年4月~2025年3月のグリーランドとの主要な貿易品目は、輸出が金属製品、科学機器、ゴム製品、輸入が魚介類、機械式発電機、航空機、科学機器などとなっている。英国政府によると、英国のEU離脱以降、グリーンランド産水産物には最大20%の関税が課されてきた。

(森詩織)

(英国、グリーンランド、デンマーク)

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