ギネス・ナイジェリアを買収したトララムグループ、日本企業との連携を模索

(ナイジェリア、シンガポール)

調査部国際経済課

2025年09月05日

ナイジェリアを中心にアフリカでビジネスを展開するコングロマリットのトララムグループ(Tolaram Group、本社:シンガポール)のハレッシュ・アスワニ最高経営責任者は9月3日、ジェトロによるインタビューに対し「日本のビールブランドのアフリカ展開などを含むさまざまな連携の可能性を模索したい」とコメントし、日本企業との連携を加速させる方針を明らかにした。

トララムグループは5月20日、ナイジェリアの飲料会社ギネス・ナイジェリア(Guinness Nigeria)のマイノリティ株主への公開買い付けを通じて、持ち株比率を70.86%まで引き上げた。同社は、2024年9月に英国の酒造企業ディアジオ(Diageo)からギネス・ナイジェリアの株式58.02%を取得していた。買収額は総額で約229億ナイラ(約22億円、1ナイラ=約0.096円)とされる。ディアジオは高インフレや通貨安による収益悪化を背景に資産売却を進めつつ、トララムと長期ライセンス契約およびロイヤルティー契約を結び、「ギネス」ブランドのライセンス供与を継続する方針だ。

アスワニ氏は「当社はファミリービジネスとして創業した。厳格なガバナンスと効率的な事業運営、長期的な経営姿勢を特徴としており、持続的なパートナーシップ形成を進めている。今後は、食品事業で築いたアフリカ市場での基盤を生かし、ビール事業をナイジェリアからアフリカ広域に展開していく。ブランド力や技術力で強みを持つ日本企業とも積極的に連携したい」と述べた。同社は即席麺のインドミーやシリアルのケロッグなどの製品をナイジェリアで製造・販売しており、今回の買収によりナイジェリアにおける食品・飲料事業のポートフォリオを一層強化することとなる。

ドイツの統計データ会社スタティスタ(Statista)によると、ナイジェリアのビール市場の規模は2025年に63億9,000万ドルに達する。オランダのビール大手ハイネケン傘下のナイジェリアン・ブリュワリーズ(Nigerian Breweries)が最大手としてシェアを握る。人口増加と都市化を背景に中長期的な市場拡大が見込まれる一方、近年は高インフレと為替変動により購買力が低下し、低価格ブランドへのシフトが進むなど消費者行動の変化もみられる。ギネス・ナイジェリアはトララムによる経営刷新により業務改善を実現しており、ブランド力と現地流通網の相乗効果を生かした競争力強化が見込まれる。

(馬場安里紗)

(ナイジェリア、シンガポール)

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