トヨタ、チェコの既存工場でBEV生産へ、脱炭素化促進
(チェコ、日本)
プラハ発
2025年09月17日
トヨタの欧州統括会社トヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME、本社:ベルギー)は9月3日、チェコ政府との合同記者会見で、完全子会社のトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ、本社:チェコ・コリーン市)がバッテリー式電気自動車(BEV)の生産を既存工場で開始すると発表した(プレスリリース)。欧州での2040年までのカーボンニュートラル達成に向けた同社の計画の一環として実行するもので、投資額は約6億8,000万ユーロ、うち最大6,400万ユーロをチェコ政府が専用バッテリー組み立て設備を対象とした投資優遇措置として支援する(2023年4月6日記事参照)。政府は新規雇用数を245人と発表している。
TMMCZは現在、小型車「アイゴX」とコンパクトカー「ヤリス」を生産しており、2024年の年間生産台数は22万5,058台だった(チェコ自動車工業会統計)。2025年11月以降は「アイゴX」の生産はハイブリッドモデルのみに限定する計画だ。今回のBEV生産開始の決定は多角的な事業戦略の一環として、ラインアップ拡張に向けた同社の生産能力引き上げにもつながるものとなる。
TMEの中田佳宏・社長兼最高経営責任者(CEO)は「先進技術を基盤としたこのプロジェクトは、当社の欧州市場でのプレゼンスを強化し、よりクリーンで効率的なモビリティーソリューションへの移行に貢献する」と、今回の決定の意義を説明している。
チェコ政府も、チェコのクリーンモビリティーへの移行に同プロジェクトの寄与を重視している。同時に、TMEがチェコを選択した事実を強調し、チェコ自動車産業とチェコ経済の発展におけるトヨタの貢献への期待を表明した。
ペトル・フィアラ首相は「他の国々も電気自動車製造への投資誘致を図る中、トヨタという有力な外国投資企業をチェコが獲得できてうれしく思う。今回の投資は、コリーン市の既存の生産拡大のみならず、わが国の技術的水準の向上と自動車の長期的な持続的生産へ向けた大きな一歩を意味する。同様の投資は、チェコの国際競争力向上、イノベーション支援、高技能者の雇用機会創出により、チェコ自動車産業の将来を左右する」と述べた。
ルカーシュ・ブルチェック産業貿易相は「チェコは他の欧州やアジア諸国との厳しい競争に勝ち抜くことができた。安定した予測可能なビジネス環境、優れたインフラと熟練した労働力により、チェコがビジネスに最適な場所であることを証明した。トヨタはチェコの自動車産業のみならず、チェコの高付加価値経済への移行にとっても非常に重要だ」と指摘した。
(中川圭子)
(チェコ、日本)
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