政府系投資会社テマセク、投資先別に事業を3分割

(シンガポール)

シンガポール発

2025年09月03日

シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは8月28日、投資ポートフォリオに応じて事業を3分割し、3つの完全子会社を新たに設立すると発表した。これらの子会社は2026年4月1日付で発足する。

テマセクは再編について、地政学的緊張など事業環境の変化を踏まえ、「成長と収益向上のためのポートフォリオ戦略を支えるため、組織構造を適応させる」としている。新設するのは、(1)主に外国企業への直接投資を行う「テマセク・グローバル・インベストメンツ(TGI)」、(2)国内企業の持ち株会社「テマセク・シンガポール(TSG)」、(3)ファンドや資産運用会社に投資する「テマセク・パートナーシップ・ソリューションズ(TPS)」の3社となる。

リム・ブンヘン会長は報道発表で「資産ポートフォリオは過去20年で急拡大した。今回の再編により、効率的に事業を運営し、将来に向けた体制整備が可能になる」と説明した。同社の2025年3月期の年次報告書(7月9日発表)によると、同社の投資ポートフォリオの純資産総額は過去最高の4,340億シンガポール・ドル(約49兆4,760億円、Sドル、1Sドル=約114円)だった(2025年7月11日記事参照)。資産構成比は2025年3月31日時点で、外国直接投資が36%、国内企業の持ち株が41%、ファンドや資産運用会社などへの投資が23%を占める。

テマセクは「デジタル化、持続可能な生活、消費の未来、高齢化」のトレンドに基づき、外国企業の株式投資を実施し、主な投資企業には、オランダの決済会社アディエン(Adyen)、オーストラリアの資産運用会社ベーターシェアーズ(Betashares)、中国大手IT会社騰訊(テンセント)などがある。テマセクの外国直接投資の資産価値は2004年から2025年までに20倍以上に拡大した。また、国内持ち株会社には、不動産会社キャピタランド、国内最大手銀行のDBS、シンガポール航空などがある。同社は国内持ち株会社について「長期にわたって安定的で持続的な収益をもたらす」としている。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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