スランゴール州、ASEAN航空宇宙ハブに向け前進
(マレーシア)
クアラルンプール発
2025年09月03日
マレーシアのスランゴール州政府は8月27日、同州を地域の航空宇宙ハブとして紹介し、最新プロジェクトの進捗を共有するラウンドテーブルを開催した。同ラウンドテーブルは、州投資誘致機関のインベスト・スランゴールと、政府系投資会社メンテリ・ベサル・スランゴール(MBI)、マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)の共催で行われ、高品質かつ高付加価値の航空宇宙産業への投資誘致を目的として実施された。
登壇したマレーシア航空宇宙産業公社(NAICO、注1)によると、2024年の航空宇宙産業の収益は前年比38.7%増の251億リンギ(約8,785億円、1リンギ=約35円)と、過去10年間で最大の伸びを記録した。分野別にみると、MRO(保守・修理・運用)が全体の48.6%を占め、製造が32.2%で続いた。政府は、2030年までの航空宇宙産業の収益を552億リンギまで引き上げ、3万2,000人以上の人材を育成することを目標に掲げている。さらに、NAICOは、マレーシアのサプライチェーンが米国や欧州、中東などと緊密に連携しているとした上で、特にアジア太平洋地域ではMRO需要が2034年までに年平均4.7%で拡大する見通しで、マレーシアにとって大きなビジネス機会が生まれると指摘した。
また、MBIはKLIAエアロポリス(注2)の一環の「スランゴール・エアロ・パーク(SAP)」の進捗状況を紹介した。SAPは、先進的な部品製造、統合物流、研究開発、人材育成を支援するために設計され、東南アジアで最も将来性ある航空宇宙産業の集積地の1つとして位置づけることを目指す。効率的な承認手続きや、ライセンス料の免除、投資税控除など、投資家にとって魅力的な支援策も講じるという。
さらに、航空宇宙産業のエコシステム発展を促進するため、10月にクアラルンプール市で「スランゴール航空宇宙サミット2025」が開催されることも明らかになった。同サミットは、ビジネス交流や知見共有の場としてのみならず、地場中小企業の振興を通じて、マレーシアをASEANの航空宇宙ハブとして広く認知させることを目的としている。
アミルディン・シャリ州首相は、同州がマレーシアの航空宇宙活動の約70%を担っていることを踏まえ、2026年に発表予定の州中期計画「第2次スランゴール計画」でも、航空宇宙産業を重点分野として位置づけるだろうと述べた。また、産業発展に伴って人材需要が高まっていることから、人材育成に向けた関係各機関との連携を呼びかけた。
アミルディン・スランゴール州首相(中央)による説明(ジェトロ撮影)
(注1)NAICOは、航空宇宙エコシステムの成長を主導し、マレーシア航空宇宙産業ブループリント2030(MAIB 2030)に基づく施策を実施するマレーシア投資貿易産業省(MITI)傘下の機関。
(注2)KLIAエアロポリスは、クアラルンプール国際空港(KLIA)を中心に展開する経済・産業・観光のハブとしての未来志向型「空港都市」開発プロジェクト。
(戴可炘、ニサ・モハマド)
(マレーシア)
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