ペートンタン首相の資格喪失をタイ憲法裁判所が判断
(タイ)
バンコク発
2025年09月02日
タイ憲法裁判所は8月29日に、ペートンタン・チナワット氏の首相資格は喪失したと6対3の多数決で判断した。ペートンタン氏は7月1日に首相の一時職務停止命令を裁判所から受けていた(2025年7月2日記事参照)。
憲法裁判所の発表によると、2025年6月18日にペートンタン首相とカンボジアのフン・セン上院議長との間で国境紛争をめぐって行われた電話会談の音声が公開されたことを受け、36人の上院議員が連名でペートンタン首相の資格喪失について憲法裁判所に判断を求める申し立てを行い、裁判所はこれに対して判断を示した。
ペートンタン首相は、裁判所に対し音声が自身のものであることを認めたものの、後に「穏便な外交交渉を意図した私的な電話だった」と説明していた。一方、申立人らは、首相としての責任を果たさず、カンボジア側の意向に沿う姿勢を示したことが、憲法に定める「誠実性の欠如」および「重大な倫理違反」に該当すると主張していた。
裁判所は、少数意見で「重大な倫理違反には当たらない」として資格喪失を否定したものの、多数意見においてペートンタン氏が首相としての資格を欠いていると認定し、最終的に6対3の多数決でペートンタン氏の首相資格を喪失させる判断を下した。
首相の資格喪失に伴い、内閣全体も失職することになる。
「バンコク・ポスト」紙(8月29日付)によると、新首相候補については、プアタイ党からチャイカセム・ニティシリ氏、ブムジャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン氏、元首相のプラユット・チャンオチャ氏などが挙られている。新首相が選ばれるまで、現内閣は暫定的に職務を継続するが、新首相が選任されるまで数週間を要するとみている。チュラロンコン大学の政治学者スティトーン・タナニティチョット氏は「新首相の選出は困難で、時間がかかる可能性がある」と述べた。
一方、英国系コンサルティング会社「VERO」によると、裁判所の決定直後から、アヌティン氏は最大野党である国民党と会談を行い、4カ月以内の議会解散、カンボジアとの国境問題の解決などの条件を受け入れ、支持を取り付けた。これにより、9月第1週にも国会が招集されると見込んでいる。
(野田芳美、ピンラウィー・シリサップ)
(タイ)
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