シンガポールとタイ、炭素クレジット実施協定に署名
(シンガポール、タイ)
シンガポール発
2025年08月25日
シンガポール政府は8月19日、タイとカーボンクレジット(炭素クレジット)協力に関する実施協定に署名した〔シンガポール貿易産業省(MTI)プレスリリース〕。同実施協定は、パリ協定第6条に沿った、炭素緩和プロジェクトから創出された炭素クレジット移転の枠組みを確立する。実施協定に基づく炭素クレジットプロジェクトの認可や、炭素クレジットの方法に関する情報は追って発表される。
この実施協定に基づく調整された炭素クレジットは、シンガポールの「国際炭素クレジット(ICC)フレームワーク」に基づいて、企業の課税対象排出量の一部(最大5%)と相殺できる(2024年6月6日付地域・分析レポート参照)。シンガポールの炭素税は、2024年から二酸化炭素(CO2)換算排出量1トン当たり25シンガポール・ドル(約2,875円、Sドル、1Sドル=約115円)で、2026~2027年に45Sドル、2030年までには50~80Sドルまで引き上げられる予定だ。
シンガポールは、認証された炭素クレジットの収益の5%に相当する額を持続可能な森林管理や洪水に対するレジリエンス〔強靭(きょうじん)化〕計画など、タイの気候適応策に充てる。また、シンガポールは世界規模で排出量の純減少に貢献するため、認証された炭素クレジットの2%を発行時に無効化する。
シンガポールにとってタイとの実施協定は、パプアニューギニア、ガーナ、ブータン、ペルー、チリ、ルワンダ、パラグアイに続く8例目で、ASEAN加盟国の中ではタイが最初の実施協定署名国となった。シンガポールはこれらのほかに、ベトナムとの間で実施協定交渉が実質的に妥結しているほか、その他の一部の国との間で、パリ協定第6条に沿った炭素クレジット協力に関する協力に向けた覚書(MOU)に署名し、法的拘束力のある実施協定に向けた取り組みを進めている(2025年5月27日記事参照)。
(朝倉啓介)
(シンガポール、タイ)
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