不法移民取り締まりは米カリフォルニア経済に混乱、大学などが指摘
(米国)
ロサンゼルス発
2025年08月05日
米国のカリフォルニア大学マーセド校コミュニティ・労働センターは7月に、報告書「連邦政府による不法移民の取り締まりがカリフォルニア州の民間雇用に及ぼす影響」を発表した。
この報告書によると、5月11日から6月8日までの約1カ月間でカリフォルニア(CA)州の就労者数は3.1%減少した。この大幅な減少は新型コロナウイルスによる外出禁止令発出時に匹敵するもので、移民の取り締まりは同州の経済に混乱を与えると指摘した。同報告書では、移民を含めた民間部門による州の外国人労働者数は約1カ月間で7.2%減少(19万3,428人減)し、うちラテン系労働者は5.6%減少(36万3,817人減)した。
ベイエリア評議会経済研究所が6月に発表した報告書「カリフォルニア州における大量国外追放の経済的影響」によると、CA州の1,060万人の移民のうち、228万人は就労資格を保持しない労働者であることが明らかになり、移民の5人に1人が就労資格を持たないことになる。この数字は州全体の労働者の8%を占め、CA州内総生産(GDP)の約5%に当たる。また、就労資格を保持しない労働者を失うことは農業への影響も大きいと指摘する。結果として、同産業のGDPを14%縮小させるとの見方を示した。CA州では約600億ドルの収益を持つ農業は大きな産業であることから、移民の取り締まりに対する懸念が高まっている。
米国農務省のデータによると、全米で就労資格のない移民の農業労働者の割合が1990年代に増加し、その後も拡大傾向は続き、2020~2022年には農作物栽培に従事する就労資格のない移民の割合は42%と約半数近くを占めるが、労働資格保持者は19%に過ぎない。
(サチエ・ヴァメーレン)
(米国)
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