インド政府、2品種のゲノム編集イネを発表

(インド)

ニューデリー発

2025年06月02日

インドのシブラジ・シン・チョウハン農業・農民福祉相は5月4日、ゲノム編集技術によって2品種のイネを開発したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。インドの主食の1つ、コメの生産量増加や、環境保全につながることが期待されるという。

1品種目は、南部ハイデラバードのインド農業研究委員会(ICAR)傘下のインド稲研究所(IIRRR)で、サンバ・マシュリ(BPT520)品種を基に開発したDRRライス100(カマラ)だ。穂あたりの粒数が増加するように遺伝子変異を加えており、野外試験の結果、従来品種より収穫量が約19%増加した。2品種目は、首都ニューデリーのICAR傘下のインド農業研究所(IARI)で、MTU1010品種を基に開発したプサDSTライス1だ。遺伝子変異によって乾燥耐性や耐塩性が高められており、野外試験では収穫量が10~30%増加した。

この2品種は「CRISPR-Cas9」という、生物が生来的に持つ遺伝子の一部をピンポイントで変異させるゲノム編集技術を用いて開発した。この技術は、外来遺伝子を生物に組み込む遺伝子組み換え技術と区別される。ゲノム編集は一般的に、DNAを外部から導入せず、数塩基のみに変異を生じさせるSDN-1、短いDNA断片を導入することで数塩基のみに狙った変異を生じさせるSDN-2、外部から大きなDNA断片を導入し、外来遺伝子が加えられるSDN-3に分類される。農林水産物に対するゲノム編集の扱いは各国で異なるが、インドは一般作物へのゲノム編集利用について、SDN-1、SDN-2を認めている。

今回発表した品種は2018年から国立農業基金の下で開発が行われた。この2品種は現在、知的財産権を取得する過程にあり、2年以内をめどに農家に種子が普及する予定だ(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月5日)。

インド政府は、イネ以外にも農作物の品種改良に対するゲノム編集技術の活用を進めている。2023年度(2023年4月~2024年3月)の国家予算案では、ゲノム編集による農作物の開発に500億ルピー(約850億円、1ルピー=約1.7円)を割り当て、油用種子や豆類など幾つかの作物について研究が始まっている。

(丸山春花、サンディープ・シン)

(インド)

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