鉄鋼省、輸入鉄鋼製品の投入原料に対するインド標準規格取得の義務化通達

(インド)

ニューデリー発

2025年06月26日

インド鉄鋼省は6月13日、輸入の鉄鋼や鉄鋼製品の投入原料に対して、インド標準規格(IS、通称BIS)の取得と鉄鋼輸入監視システム(SIMS)ポータル(注)への登録を義務付けるとする通達PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発行した。

鉄鋼省は2024年8月29日に鉄鋼、鉄鋼製品に対するIS認証取得を通達PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)していたが、今回の新たな通達により、これらに投入される原料(ビレット、ブルーム、スラブなどの中間材など)に関しても、IS認証の取得を求めることになった。対象となる投入原料は製品ごとに通達に記載している。適用対象は、6月16日以降の日付で発行された船荷証券(B/L :Bill of Lading)が付与された全ての貨物だ。

インドの鉄鋼関連の日系企業各社によると、これまで、インドに製品として輸入する中間材についてはIS認証取得に対応してきたが、国外の製造拠点で原料として投入される中間材までIS認証を取得しているケースはまれだという。IS認証取得にはインド当局の担当官による現地工場査察が必要となることから、最低でも申請から6カ月かかるとされており、短期間での規格取得は困難だ。そのため、実質的に多くの鉄鋼製品の輸入が困難となる見込みで、広範な産業に影響が及ぶことが懸念される(ヒアリング日:6月24日)。

政府は製造業振興政策を推進しているが、最近、対象品目が拡大傾向にあるIS認証取得の強制化は、実質的な非関税障壁となっていることが指摘されている。背景には、国境問題を抱える中国からの輸入抑制を図りたい意図があるとされ、特に鉄・鉄鋼の輸入では、中国は韓国に次ぐ第2位の輸入相手国(2024年度:2024年4月~2025年3月の実績)だ。中国で生産された中間材が第三国で製品に加工された上で輸入されるケースもあるとみられ、今回の投入原料に対するIS認証取得義務化は、インド政府が他国を迂回した中国製鉄鋼の輸入を抑えたい狙いがあるとみられている。

(注)SIMS(Steel Import Monitoring System、鉄鋼輸入監視システム)は、2020年に導入され、鉄鋼製品の輸入業者に対して輸入する製品の原産国、数量、価格などの情報の登録を義務付けている。

(丸山春花)

(インド)

ビジネス短信 f5286a9e040e9884