ケニア政府、万博を契機に「日・ケニア・ハイレベル・ビジネスフォーラム」を大阪で開催

(日本、ケニア)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年06月30日

ケニア政府は6月23日、大阪・関西万博を契機にケニアからビジネスミッション団が来日する機会に合わせ、大阪で「日・ケニア・ハイレベル・ビジネスフォーラム」を開催した。投資・貿易・産業省の長官が対日貿易赤字の是正を目指し輸出多角化について言及したほか、日本企業が現地の産業発展や経済・社会課題の解決に向けた取り組みを披露した。

リー・キニャンジュイ投資・貿易・産業省長官は基調講演で、同国の投資環境について説明した。5%を超える高い経済成長率、東アフリカ共同体(EAC)をはじめとするアフリカの自由貿易圏へのアクセスが可能なことと、そのゲートウェーとなる東アフリカ最大規模のモンバサ港の存在、情報通信技術(ICT)教育の充実と訓練を受けた労働者の存在などの点を強調しつつ、さらなるケニアへの投資を参加者に呼びかけた。対日貿易では大幅に赤字であることに言及し、茶や花き、コーヒーなど農産品に偏った輸出品目の多角化を図るために、自動車産業や繊維産業を誘致したいとも述べた。日本企業による地熱発電、港湾整備などへの貢献に感謝を表し、2025年8月に横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に代表団を送り、両国の官民連携対話をさらに進めていきたい、と語った。

写真 スピーチをするキニャンジュイ長官(ジェトロ撮影)

スピーチをするキニャンジュイ長官(ジェトロ撮影)

経済産業省の辻阪高子大臣官房審議官は、日本政府はこれまでケニアの農業、水道・衛生・医療、環境保全、モンバサ地域の開発などの支援を行ってきたと説明した。両国には大統領や首相の往来などハイレベルの関係もあり、2023年10月には産業政策対話外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを立ち上げた。これまで3回対話を実施し、産業の裾野拡大や自動車産業の発展などについて協議を行っている、と語った。その上で、ケニア進出日系企業数はアフリカで2番目となる約120社に上り、多くの日本企業が注目している国であると述べた。

豊田通商のシニアエグゼクティブアドバイザーの加留部淳氏は、同社のアフリカビジネスの概況とケニアに関する活動について説明した。ケニアでは75年以上の歴史を有するモビリティー事業のほか、消費者向けのヘルスケア製品販売と薬局チェーンの展開、自動車・農業機械・建機の整備工を育成する研修施設の運営など、ケニア政府の掲げる長期開発プログラム「ビジョン2030」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに沿った活動をしており、同国の持続可能な産業発展に貢献していきたいと意欲を示した。

ユニ・チャームの高原豪久代表取締役社長執行役員は、ケニア市場への進出理由について次の点を指摘した。

  • 東アフリカの中心地であり、自由貿易協定(FTA)を用いて人口増加著しいアフリカ市場にアクセス可能なこと。
  • 人口における女性と若年層が占める割合が高いこと。
  • モンバサ港やナイロビ国際空港など優れた物流インフラがあること。

他方、参入にあたっての障壁だったのは消費者の所得格差と社会慣習とし、「当社はこれを乗り越えるため、中間層や貧困層の女性に対して、生理と生理用品使用に対する教育・啓蒙(けいもう)活動を行い、草の根から市場を開拓していく取り組みを行っている」と語った。また、日常的な使用が可能な商品価格とするために、これまでエジプトから輸入していた製品をケニアでの生産に切り替える予定と述べた。

写真 登壇者による記念撮影の様子(ジェトロ撮影)

登壇者による記念撮影の様子(ジェトロ撮影)

(齋藤寛)

(日本、ケニア)

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