米ノースダコタ州で、中西部最大級のアグリテックカンファレンス開催
(米国)
シカゴ発
2025年06月26日
次世代農業の最前線を体感できる米国中西部で最大規模のアグリテックカンファレンス「カルティベイト 2025」が6月12日、ノースダコタ州ファーゴ市内のファーゴ・シビック・センターで開催された。
主催はアグリテック分野のイノベーション促進機関のグランド・ファームで、農業の未来を形作る技術革新の発信拠点として注目を集めており、イベントには、農業従事者やスタートアップ、投資家、研究者、政策立案者など多様な参加者が集った。人工知能(AI)やロボティクス、精密農業、カーボンマーケットなどの先端技術が議論の中心となり、基調講演やパネルディスカッション、ワークショップを通じて、実践的な課題解決とネットワーキングが促進された。
カンファレンス冒頭で、主催者は、(1)害虫管理、(2)気候管理(精密農業)、(3)土壌の健全性、(4)農業機器の開発(サイバーセキュリティー、データ接続、自動化など)という4つの主要課題に焦点を当てて議論を行うとし、「全体的な目標は、農業界が抱える重要な課題に対処するための革新的な技術やソリューションを結びつけることだ」と述べた。
カンファレンスでは、アグリテックのスタートアップが登壇し、さまざまな課題解決の糸口となる技術を発信するとともに、農家や農業組合の関係者らによるパネルディスカッションでは、精密農業や酪農技術の活用事例と課題が議論された。登壇者が、技術が効率向上に貢献する一方で、費用や互換性の問題なども生じるため、現場のニーズに応じた導入が促進されるよう、農家と企業との対話の重要性を強調する場面もあった。
米国中西部の西側に広がるファームベルトは、肥沃(ひよく)な土壌と広大な平地が広がる農業適地で、農業大学や研究機関、農機・バイオ企業が密接に連携しており、ノースダコタ州にもそのようなアグリテックのエコシステムが集積している。なお、グランド・ファームは日本との取り組みとして、2024年6月から埼玉県深谷市とアグリテック分野での連携を推進しており、ジェトロはJ-Bridge事業の一環として両社の連携支援をしている(2024年6月24日記事参照)。
今回のカンファレンスでは、ジェトロは主催者経由でさまざまな関係者の紹介を受け、日系企業との連携機運の高まりや、ジェトロ・J-BRIDGE(注)の取り組みなどについて、個別にアプローチを実施した。特に、土壌の保全管理や自動化・ロボティクスなどを手掛ける現地企業からは、日系のパートナー企業やディストリビューター、エンドユーザーに関心を持っている様子がうかがえた。こうしたネットワークを活用して継続的に取り組むことで、米国中西部で日系企業とのオープンイノベーションを後押ししたい。
農家や農業組合の関係者らによるパネルディスカッション(ジェトロ撮影)
(注)日本企業とスタートアップなどの海外企業の国際的なオープンイノベーション創出のためのビジネスプラットフォーム
(三原洋平)
(米国)
ビジネス短信 f0161602d180d701