多国間主義・地域連携を議論、アスタナ国際フォーラム開催

(カザフスタン)

タシケント発

2025年06月06日

カザフスタンの首都アスタナで52930日、「アスタナ国際フォーラム」が開催された。同国のカシムジョマルト・トカエフ大統領をはじめ、国内外の官民関係者や国際機関の専門家が政治経済、国際課題に関する議論を行った。

写真 アスタナ国際フォーラムの会場(ジェトロ撮影)

アスタナ国際フォーラムの会場(ジェトロ撮影)

トカエフ大統領は29日の全体会合で「多国間主義が揺らぎ、保護主義が強まっている」と世界情勢を評し、多国間の対話・協力の重要性を訴えた。アスタナ国際フォーラムは、相互尊重と自由な対話を通じて多国間協力を支援する場とも述べた。

カザフスタン経済については、2024年に5.1%を記録したGDP成長率や、過去最高額となった外国直接投資、カスピ海横断国際輸送路(TITR)を通じた輸送量の62%増加などの成果を報告した。今後はデジタル技術や人工知能(AI)、クリーンエネルギー分野への注力を目指すと語った。

分科会では、地域連携の議論が活発に行われた。分科会「地域の連結を強化し、開発可能性を解き放つ」では、前国連事務総長で、韓国に本部を置くグローバル・グリーン成長研究所議長の潘基文(パン・ギムン)氏が登壇した。潘氏は、世界的な貿易紛争が国際経済に悲惨な結果を招き得ると批判し、生産ネットワークとサプライチェーンの強化による国際的な連携が重要と述べた。その上で、カザフスタンはアジアと欧州をつなぐ要所と指摘した。

カザフスタンのアリベク・クアンティロフ外務次官は、中国と欧州を結ぶTITRの発展を強調した。2024年3月の中国・西安からアゼルバイジャンのバクー港までの輸送事例を紹介し、輸送期間が2022年夏時点の53日間から11日間に減少したと報告し、カザフスタンの積極的な投資が地域連携に貢献していると述べた。

30日に行われた分科会「中央アジアの次の10年:グローバル交差点としての台頭」では、中央アジア内連携に関する議論が行われた。国連アフガニスタン支援ミッションのローザ・オトゥンバエワ事務総長特別代表(キルギス元大統領)は、タジキスタン、キルギス、ウズベキスタンの国境を巡る紛争の解決(注)を踏まえ「10年前にはなし得なかった域内連携が進んでいる」と現状を総括した。

独立系シンクタンクのカスピアン・ポリシー・センターのエリック・ルデンシオルド研究部長は、中央アジアを経由した輸送能力の飛躍的な向上を評価し、地域内貿易の効率化のためにはインフラなどのハード面の改善に加え、規制やデジタル化などのソフト面の改革が必要だと指摘した。

(注)2025年3月13日、キルギスとタジキスタンは、両国間の国境に関する条約に署名した。また、同月31日には、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンが国境の接点を定める条約に署名した。

(一瀬友太)

(カザフスタン)

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