5月の貿易赤字は218億8,000万ドルに縮小、原油・金の輸入が減少
(インド)
ムンバイ発
2025年06月19日
インド商工省(MoCI)が6月16日に発表した「貿易統計(速報値)」によると、5月の貿易収支(サービスを除く)は約218億8,000万ドルの赤字だった(添付資料図参照)。原油や金などの輸入減少に伴い、貿易赤字は約264億2,000万ドルだった4月から縮小した。輸出額は387億3,016万ドルで前年同月比2.2%減少、輸入額は606億1,071万ドルで1.7%減少した。
輸出額の内訳をみると、電子製品45億6,947万ドル(前年同月比54.1%増)、有機・無機化学製品26億8,317万ドル(16.0%増)、医薬品24億7,570万ドル(7.4%増)などが増加した。一方で、金額の大きいエンジニアリング製品98億8,701万ドル(0.8%減)、石油製品56億4,380万ドル(30.3%減)、宝石類23億7,618万ドル(13.9%減)などは減少した。
輸入に関しては、電子製品90億9,190万ドル(前年同月比27.2%増)、電気・一般機械50億1,001万ドル(20.8%増)、化学原料・製品34億3,404万ドル(約6割増)、有機・無機化学製品25億5,702万ドル(0.5%増)などが増加した。一方で、輸入額全体の約4分の1を占める石油製品・原油が147億5,127万ドルで26.1%減少したほか、石炭・コークス等26億5,969万ドル(19.4%減)、金25億4,978万ドル(12.6%減)などは減少した。
現地報道によると、インド輸出業者連盟(FIEO)会長のS.C.ラルハン氏は、ソフトウエアや金融サービスなどを中心にサービス輸出が堅調であり、「中東での物流混乱にもかかわらず、輸出業者は柔軟に対応し、輸出成長を維持している」と述べた。一方、MoCI傘下の機械輸出促進機構(EEPC)会長のパンカジ・チャダ氏は「米国の関税や地政学リスクがエンジニアリング製品の輸出に影響を与えており、イスラエル・イラン間の緊張がさらなる混乱を招く可能性がある」と指摘している(「デカン・ヘラルド」紙6月16日)。
昨今の中東情勢の不安定化により、ホルムズ海峡など主要海上輸送路での遅延や運賃の高騰が発生しており、インドの輸入コスト上昇や供給網の再構築を迫る動きが見られる。とりわけ原油・エネルギー資源の調達や関連品目の価格形成に影響が及ぶ可能性があり、今後の地政学的リスクの展開次第では、インドの貿易構造自体に中長期的な調整圧力がかかることも懸念される。
(篠田正大)
(インド)
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