4月の米個人消費支出、消費は弱い伸び、物価は引き続き低下も、内容はまちまち
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月03日
米国商務省は5月30 日、4月の個人消費支出(PCE)を公表した。駆け込み需要の剥落の影響や、先行き不安の増大に伴う貯蓄への傾斜などの要因から、消費の伸びは弱まっている。
所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比0.8%増(前月0.7%増)と、市場予測の(0.3%増)を大きく上回った。増加分の大半が所得移転(前月比2.8%増、寄与度0.5ポイント)によるものだが、社会保障公正法の施行に伴って還付が行われたことによるものと説明されており、一時的な増加にとどまる見込みだ。そのほかでは、雇用者報酬(0.5%増、0.3ポイント)は前月とほぼ同水準の伸びを見せた。名目可処分所得(0.8%増)の増加分は、多くが貯蓄(0.6ポイント)に充てられたもようで、名目個人消費支出(0.2%増)の伸びは限定的だった(添付資料表1参照)。
実質ベースでの個人消費支出は前月比0.1%増で、前月(0.7%増)から伸びは低下した。内訳では、財部門(寄与度マイナス0.1ポイント)で、コンピュータや自動車などの消費が低下した。関税引き上げ前の駆け込み需要が剥落した影響とみられる。一方、サービス部門(0.2ポイント)は、金融・保険サービス(0.06ポイント)やヘルスケアサービス(0.05ポイント)などが底堅く推移した結果、プラスを維持した(添付資料表2参照)。
物価関連については、PCEデフレーターは前年同月比2.1%増(前月2.3%増)、前月比では0.1%増(前月0.0%増) だった(添付資料表3参照)。変動が大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は前年同月比2.5%増(前月2.7%増)、前月比は0.1%増(前月0.1%増)、米国連邦準備制度理事会(FRB)が参照するコア指数の3カ月前比、6カ月前比は、それぞれ2.7%増(前月3.6%増)、2.6%増(前月3.0%増)だった。コア指数の数値は、いずれも市場予想と一致した。ただし、原油価格の低下に伴うガソリン価格の低下や、鶏卵価格の低下に伴う食料品価格の伸びの低下などがみられる一方で、家具やコンピュータなど、輸入に頼る財の中には価格が上昇するものも散見された。また、サービス価格の内容もまちまちだった(添付資料表3参照)。
全体として、物価は低下傾向が継続しているものの、FRBのジェローム・パウエル議長は5月29日に行われたドナルド・トランプ大統領との面会で、「金融政策の方向性は、今後入ってくる経済情報と、それが見通しにどのような影響を与えるかに全面的に左右される」と強調するなど、大統領が求める早期の利下げ再開とは距離を置くスタンスを示しており、関税政策などが与える影響について、時間をかけて検証していく方針だ。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 e0f4ee980ed4a10e