スタートアップの祭典で中印、MENA地域との連携の方向性が鮮明に

(ロシア)

調査部欧州課

2025年06月09日

ロシア・モスクワ郊外にある技術革新の拠点、スコルコボ・イノベーションセンターで5月29~30日、「スタートアップ・ビレッジ2025」が開催された。2013年に始まった同イベントはロシアCIS地域最大級のスタートアップの祭典であり、今回で13回目となる。起業家や投資家向けのセミナーなどが連日開催される「モスクワ起業家週間」(5月22日~6月1日)に組み込まれ、入場料は無料だった。

主催者のスコルコボ基金によれば、参加者数は1万6,000人と過去最高を記録した。しかし、参加国数は43カ国と、新型コロナ禍前の2019年の85カ国と比べて約半数にとどまった。会場内のデモブースには、海外のスタートアップ20社が参加した。国別にみると、サウジアラビアと中国が6社ずつ、インド4社、南アフリカ共和国とベラルーシがそれぞれ2社だった。海外スタートアップのブースでは、医療や人工知能(AI)の分野などでの研究成果が紹介された。

写真 海外スタートアップのデモブース(ジェトロ撮影)

海外スタートアップのデモブース(ジェトロ撮影)

5月29日にはスコルコボ基金が、中東・北アフリカ(MENA)やアジアのイノベーション促進関係機関や企業と両地域のエコシステムの発展、輸出潜在力を持つ有望なスタートアップ支援に関する戦略的協定をそれぞれ締結した。締結先には、インドのイノベーション施設T-Hub、サウジアラビアの投資会社タダームン・インベストメント、中国のスタートアップ支援のHICOOLが含まれる。

「メード・イン・モスクワ」を強調した医療技術の展示も

イベント期間中、モスクワの複数の病院は、民間企業や大学をはじめとする学術機関と共同開発したさまざまな医療技術を披露した。来場者は会場の一角に設けられた特別ブースで、モスクワで開発された技術や機器を用いた簡易検査を体験することができた。例えば、モスクワ大学が開発に携わったヘモグロビン量の測定技術や、医療用レーザー機器メーカーによるAIを活用した悪性腫瘍のスクリーニング技術などが紹介された。ブースにいた現役医師らの話によると、こうした技術は特許取得の段階にあり、すでに病院で試験運用されているものもあるという。なお、展示されている技術や機器は必ずしもロシアの技術ではなく、中にはオランダ製の年齢測定機器を紹介するブースもあった。

写真 医療検査の希望者でにぎわう会場(ジェトロ撮影)

医療検査の希望者でにぎわう会場(ジェトロ撮影)

写真 モスクワ大学の研究員の説明を受けながらヘモグロビン量を測定(ジェトロ撮影)

モスクワ大学の研究員の説明を受けながらヘモグロビン量を測定(ジェトロ撮影)

(欧州課)

(ロシア)

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