セルビア第1副首相兼財務相が訪日、大阪でのイベントで投資呼びかけ
(日本、セルビア)
大阪本部海外ビジネス推進課
2025年06月25日
セルビア商工会議所は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を機にセルビアから経済ミッション団が訪日したことに伴い、大阪商工会議所と在セルビア日本商工会(JBAS)、ジェトロとともに、6月23日に大阪で投資カンファレンスを開催した。同国のシニシャ・マリ第1副首相兼財務相のほか、現地に進出している日本企業が登壇し、セルビアの投資環境に関して説明した。
マリ第1副首相兼財務相は基調講演で、セルビアは人口約700万人ながら、発明家ではニコラ・テスラ氏、スポーツではテニス選手のノバク・ジョコビッチ氏、サッカー選手のドラガン・ストイコビッチ氏など、世界トップレベルの人材を輩出する国と紹介した上で、経済面の強みとして、主要な地域と自由貿易協定(FTA)を締結し、世界28億人と特恵関税で貿易ができることや、経済成長率が欧州の中で上位にあり、政府債務残高が低く、国債格付けが安定していること、さらに、2027年のベオグラード万博(注)開催に向けてインフラ整備・拡張などが進展していくことだと語った。さらに、対内直接投資は年々増加を見せており、日本には対してより一層の投資を期待していると呼びかけた。
マリ第1副首相兼財務相のスピーチ(ジェトロ撮影)
セルビア開発庁(RAS)のニコラ・ヤンコビッチ国際協力部長は、セルビアの強みは人件費や水道光熱費、オフィス賃料など投資関連コストが安価なことと、工学系の学生が大学卒業生の33%を占めること、法人税をはじめとする各種優遇税制の存在と説明し、日系企業では、ニデック、矢崎総業、横浜ゴム、前川製作所、NTT、ハイレックスコーポレーション、伊藤忠商事、JTI、TOYO TIRES、JFE商事などが現地に進出していると語った。
ジェトロの河田美緒理事は「セルビアはジェトロが最も注目している国の1つ」と強調した。2024年10月にジェトロがセルビアに派遣したビジネスミッションには、日本企業70社が参加した(2024年10月30日記事参照)。セルビアの魅力は、自動車分野をはじめとする幅広い産業基盤や、テック系企業を支援するスタートアップエコシステムの存在、周辺地域へのアクセスの良さ、法人設立手続きに要する期間の短さなど、数多くあると説明した上で、日本にとって欧州地域は、昨今の不安定な世界情勢下で戦略的重要性が高まっているとし、日本企業の注目は西欧、中・東欧にとどまらず、西バルカン地域にも広がってきていると述べた。
TOYO TIRES生産本部執行役員の宮守正美氏は、セルビアには世界に5カ所しかない同社の工場の1つと、マーケティング拠点を設置していると説明した。また、同国の投資環境の優れている点は企業向け優遇措置、低いカントリーリスク、英語力が高い優秀な人材の確保が容易なこと、高速道路への好アクセス、治安の良さ、コストの安さなどを挙げた。一方、改善を要する点として、関税政策、従業員が容易に病欠できる社会制度と高い欠勤率、日本への送金手続きが煩雑だと指摘した。
カンファレンスの最後には、在セルビア日本商工会と日本にあるセルビア・日本ビジネスクラブの協力に関する覚書(MOU)が締結された。
MOUの締結式(ジェトロ撮影)
(注)大阪・関西万博は5年に1度開催される登録博だが、2027年開催予定のベオグラード万博は、特定テーマ「人類のための遊び:すべての人のためのスポーツと音楽」を取り上げる認定博。
(齋藤寛)
(日本、セルビア)
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