オーストラリアのBHPなど相次ぐ多国籍企業のAI開発拠点の設置、26カ所以上に
(シンガポール)
シンガポール発
2025年06月05日
オーストラリアの大手資源会社BHPは5月27日、鉱物資源分野における人工知能(AI)導入を推進する「AIハブ」をシンガポールに設置すると発表した。シンガポールでは最近、BHPをはじめ、オランダのビール製造会社ハイネケンや米国の情報通信技術(ICT)会社オラクルなど、内外の多国籍企業のAI開発拠点の設置が相次いでいる。
シンガポールのタン・キアットハウ上級国務相(デジタル開発・情報、保健担当)は同日、ICT関連の大型展示会・会議「ATxエンタープライズ」で、これまでに26カ所以上のAIの中核研究拠点〔センター・オブ・エクセレンス(CoE)〕が設置されたと述べた。オラクルは3月13日、AIの人材育成や導入実験などを支援するCoEの開設を発表した。ハイネケンも同月29日、生成AIを活用して社内の生産性や顧客対応の向上に取り組むラボを開設した。
また、配車や電子商取引(EC)などを提供するシンガポール最大のスタートアップ、グラブも5月23日、同社の本部ビル内にAIのCoEを開設した。同CoEでは、視覚障害者への配車サービスの改善や自社の労働生産性向上のほか、政府が取り組む「スマート国家(注)」構想実現のためのAIソリューションを開発する予定だ。
AI専門人材の育成プログラム拡充、実践的な研修機会提供
デジタル開発・情報省傘下の情報通信メディア開発庁(IMDA)は現在、AI普及に取り組む公的機関AIシンガポール(AISG)と共同で、「AI実習プログラム(AIAP
)」を通じてAI分野への転職を希望する人材を企業に派遣し、実践的な研修機会を提供している。タン上級国務相は上掲の演説の中で、AIAPを拡充して新たな「AIAP産業プログラム〔AIAP(I)〕」を開始すると発表した。多国籍企業のAI CoEが、同プログラムの研修カリキュラムを作成。研修生は、実際の産業プロジェクトを通じてAIの技術を学ぶ。同プログラムの卒業生は、グラブや地場銀行UOBなどの企業でAI関連の職種に就職する機会があるとしている。
シンガポール政府は2023年12月に発表のAIの国家戦略「国家AI戦略(NAIS2.0)」で、AIの専門人材を1万5,000人に増員するとの目標を発表していた(2023年12月12日記事参照)。
(注)「スマート国家」構想は、最新のデジタル技術を用いて経済の活性化と豊かな暮らしの実現を目指すもの。2014年に開始し、2024年10月に同構想の第2段階「スマート国家2.0」を発表している(2024年10月7日記事参照)。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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