インド最大級のスラム再開発、ダラビ再開発基本計画をMH州政府が正式承認
(インド)
ムンバイ発
2025年06月04日
インド西部マハーラーシュトラ(MH)州政府は5月28日、州都ムンバイに位置するインド最大級のスラム再開発事業「ダラビ再開発プロジェクト」の基本計画を正式に承認した。州政府高官が参加した会議で、プロジェクト最高経営責任者(CEO)SVR・スリニバス氏が概要を報告し、デベンドラ・ファドナビス州首相が承認した。当局のウェブサイトでは正式発表されていないが、現地メディアが一斉に報じている(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月29日、「インディアン・エクスプレス」紙5月29日など)。
このプロジェクトは、州政府のスラム再開発局(SRA)とアダニ・グループ傘下の特別目的事業体(SPV)のナブバーラト・メガ・デベロッパーズ(NMDPL)を通じて実施される。NMDPLはアダニ・プロパティーズが80%、SRAが20%を出資している。現地報道によると、対象区域はダラビ指定区域約253.7ヘクタールのうち約173.9ヘクタールで、総事業費は約9,579億ルピー(約1兆6,284億円、1ルピー=約1.7円)とされる。2025年1月14日に着工し、2032年1月13日の完工を目指している。着工は当局から第1建設許可(First Commencement Certificate)が交付された範囲で先行的に開始されたもので、基本計画の正式承認以前から段階的に準備工事が進められていた(「インディアン・エクスプレス」紙5月29日 )。
ダラビは南北幹線道路や鉄道網が交わる交通の要衝に位置しているうえ、2025年5月にはムンバイ・メトロ3号線のダラビ駅が開業したことで、交通アクセスがさらに向上した。隣接するムンバイ屈指の金融・商業地区のバンドラ・クルラ・コンプレックス(BKC)や、国際空港へのアクセスも強化され、戦略的再開発拠点としての重要性が一層高まっている。
このプロジェクトは、構想段階から20年以上にわたって幾度も計画が中断・見直されてきた経緯があり、行政と政治、住民間の合意形成の難しさが事業の停滞要因となってきた。とりわけ、対象となる数十万世帯の住民の再定住の基準や補償内容、移転先の確保などを巡って、過去には事業者の撤退や再入札も繰り返された。
(篠田正大)
(インド)
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