ラオス特許実体審査の開始に向け、日ラオス間で協力声明に署名
(ラオス、日本)
バンコク発
2025年06月20日
日本の特許庁(JPO)とラオス知的財産局(DIP)は6月11日、ラオス特許実体審査の開始に向けた協力声明の署名式をラオス商工業省(MOIC)で開催した。式ではラオス側からサイソムペット・ノーラシング知財局長、日本側からは安田太特許技監が署名を行った。そのほか、MOICのマノトーン・ボンサイ副相、JPO、ジェトロ、ラオスDIP職員が立会人として出席した。署名式の後には、安田特許技監とマライトーン・コンマシット商工業相との会談が行われ、日ラオス知財協力の新たな一歩について意見交換を行った。
ラオスDIPは現在、特許出願の新規性・進歩性を審査する実体審査を実施していない。そのため、日本で取得した特許がラオスでは実質的に無審査で特許付与される取り組み〔特許の付与円滑化に関する協力(CPG)〕などを通じて、国外の知財庁(知的財産庁、特許庁)の審査結果を採用している。この度、ラオスが2026年に後発開発途上国(LDC)を卒業する見込みなどの影響(注)を受け、同国での特許実体審査開始に向けた調整を本格的に進める運びとなった。
この協力声明には、ラオス特許実体審査の開始に必須のラオス特許審査官の人材育成と、同審査基準の策定に関して、JPOとジェトロから支援することが盛り込まれている。また、日本からラオスへの特許出願件数を増やし、日本の対ラオス投資を促進させるために、CPGの継続や、特許を取得済み、または取得予定の日系企業とラオス企業、ラオス国民への普及啓発活動も含んでいる。
JPOとジェトロは長年にわたり、ラオス知財人材育成・研修などの知財協力を進めてきた。この協力を通じ、ラオスDIPの特許実体審査の実務・運用・判断が日本と同様のものとなり、ラオスに特許出願する日系企業にとって使いやすいものになることで、ラオスへのビジネス展開・投資が促進されることが期待される。
JPOとラオスDIPとの協力声明の署名式(ジェトロ撮影)
(注)WTO設立協定の付属書「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)」には、WTO加盟国に対して特許の実体審査などの義務が規定されている。ただし、LDC卒業までそれらの義務の免除措置があるため、LDCを卒業すると本格的に実体審査を行う体制が必要になる。
(内藤康彰)
(ラオス、日本)
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