昆虫サイボーグが人命救助へ、シンガポール南洋工科大日本人研究者チーム

(シンガポール)

シンガポール発

2025年06月12日

シンガポール南洋工科大学(NTU)の佐藤裕崇教授率いる研究チームが開発中のサイボーグ化したマダガスカルゴキブリの災害救助現場での活用が始まっている。328日に発生したミャンマー地震の被災地で初めて現場に投入された。佐藤教授はマダガスカルゴキブリにカメラや通信機能を備えたデバイスを装着した昆虫サイボーグの活用を研究している。今後は日本をはじめ、世界各国での災害救助や、水中や火災などの現場での投入を計画している(64日、ジェトロのインタビュー、注)。

写真 カメラや通信機能を備えたデバイスを装着したサイボーグ化したマダガスカルゴキブリ(佐藤教授提供)

カメラや通信機能を備えたデバイスを装着したサイボーグ化したマダガスカルゴキブリ(佐藤教授提供)

昆虫サイボーグには、赤外線カメラを搭載し、画像をリアルタイムでクラウドに送信して、人工知能(AI)により人の熱源を認識できる。電気刺激によって昆虫の動きを遠隔で制御することができ、障害物を自動で回避するアルゴリズムも開発している。佐藤教授は「昆虫をロボットのプラットフォームとして使うことで、小型探査機が直面するほぼ全ての課題を克服できる」と指摘した。昆虫は自律的に障害物を回避でき、搭載する機器の電力消費を最小限に抑えることもできる。小型ロボットでは現在、移動のための電力消費が大きくて稼働時間が短く、災害現場では「足元が不安定で動けず、実用に耐えない」という課題があるという。

ミャンマーでは、救助活動に派遣されたシンガポール防衛部隊(SCDF)が昆虫サイボーグを初めて災害現場に導入した。昆虫サイボーグのシンガポールでの独占利用契約を結ぶシンガポールの企業クラス・エンジニアリング・アンド・ソリューションズが今回の救助チームに同行した。佐藤教授は今後、昆虫に装着する電子部品装置を小型化し、現場で装着できるよう改善を加えると述べた。日本や世界各国の災害現場で導入していきたい考えだ。

また、佐藤教授が率いる研究チームは近年、より過酷な環境に対応できる昆虫サイボーグの開発にも取り組んでいる。昆虫に装着するデバイスを小型化し、昆虫に埋め込むことで、昆虫本来の自由自在な機動性を保持することが可能になるという。

(注)ミャンマー地震被災地での昆虫ロボット導入など、佐藤教授の研究内容の詳細は同教授のサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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