三井物産、インド金属リサイクル事業への出資参画と事業展望

(インド)

調査部アジア大洋州課

2025年06月11日

三井物産は202412月に、インドの金属リサイクル大手MTC Business(以下、MTC社)への出資参画を実行した。同社の取り組み状況や、インドにおけるリサイクル現場の状況について、三井物産金属資源本部製鋼原料部(以下、三井物産製鋼原料部)に聞いた(ヒアリング:522日)。

MTC社は、主に大手自動車OEMメーカーの製造拠点に沿うかたちで、インド国内の約30カ所でスクラップの集荷・選別・加工拠点(ヤード)を展開している。自動車製造などの過程で発生する新断スクラップを中心に、各ヤードで集荷・選別・加工を行い、国内の鋳物・鉄鋼メーカーなどに販売する。会社全体での年間取扱量は約200万トンで、そのうち約半数をインド国内における新断スクラップが占めている状況だ。三井物産は現在、チーフ・ストラテジー・オフィサー(Chief Strategy Officer)を務める邦人を含めて2人の出向者を派遣しており、同社の企業価値向上にインド内外から取り組んでいる。国内ではエムエム建材、オーストラリア・北米ではシムズ・リミテッド(Sims Limited.)への出資を通じて、グローバル規模で金属リサイクル事業を手掛けており、長年の取り組みで培った業界の知見をもとに戦略を構築、MTC社のさらなる事業成長を後押しする。

なお、MTC社はELVEnd Life Vehicle:廃車)のリサイクル事業も2024年に開始し、現在、グジャラート州アーメダバードおよびマハーラーシュトラ州プネの2拠点で展開している。現地での規制強化に伴う廃車解体需要の増加に合わせて、拠点数拡大や解体作業の機械化推進も今後検討していく。

写真 アーメダバードのELVリサイクル工場(三井物産社提供)

アーメダバードのELVリサイクル工場(三井物産社提供)

三井物産製鋼原料部は、インドのELVリサイクル状況について「インド政府主導での廃車解体スキームの制度化に向けた動きは加速化しつつあるが、違法に廃車解体をしている小規模事業者が後を絶たず、適切な廃車解体の重要性に対する一般消費者の意識はまだまだ不足している」と語る。20224月には、インドで自動車スクラップ政策が施行され、ELVリサイクルへの機運は徐々に高まってはいるものの、いまだ発展途上にあり、国内でも今後中長期的に取り組んでいく分野という認識が強い。廃車リサイクル事業の開拓にあたっては、解体技術で先行する日本の知見活用や他企業とのパートナーシップも視野に、規模の拡大を目指していきたいとした。

また、出資参画のタイミングは最適だったと語る。インドの金属リサイクル分野や廃車解体分野が黎明(れいめい)期であることから、足元ではいまだ多くのビジネスのチャンスが生まれてきている段階である。今後、市場拡大に合わせて、同社の事業拡大は間違いないだろうとした。

写真 スクラップリサイクル工場(三井物産社提供)

スクラップリサイクル工場(三井物産社提供)

(野本直希)

(インド)

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