山東省の卓業医療、世界初の構造化光スキャン用いたAI搭載の経皮穿刺手術ロボット公開
(中国)
青島発
2025年06月12日
中国共産党青島市委員会宣伝部と工業情報化局が主催した「人工知能(AI)・エンボディドロボット(注1)産業成果メディア見学会」で、山東省の医療科学技術企業の卓業医療は、自主開発したAI搭載の穿刺(せんし)手術ナビゲーションロボットを公開した(「青島日報」6月4日)。卓業医療の発表によると、同ロボットは、構造化光3Dスキャン技術(注2)、動体感知技術、AI技術を融合した世界初の腫瘍の定位システムで、2025年3月に国家薬品監督管理局の認証を取得した。
同社の手術ロボットで採用している構造化光3Dスキャン技術は、穿刺精度をサブミリメートル(1mm未満)レベルに向上させる。また、5G(第5世代移動通信システム)通信モジュールを活用し、遠隔操作による地域をまたいだ手術も実現する。さらに、AI補助システムを組み合わせることで、医師の穿刺技術習得を加速し、手術効率を向上させる。これにより、従来の穿刺手術が直面していた「定位の難しさ」「リスクの高さ」「習得速度の遅さ」という3つの課題を解決したとしている。同社の姜冠群董事長によると、手術ロボットに採用した構造光技術は、競合他社と比べて、定位精度が50%向上し、手術前の準備時間を80%短縮しつつ、コストは40%削減することができる。
同社の手術ロボットは腹部の実体腫瘍(肺がん、肝がんなど)に対する穿刺・生検、アブレーション治療(注3)、粒子線治療(注4)などの低侵襲(ていしんしゅう、身体への負担が比較的小さい)手術に適用できる。
国家薬品監督管理局は近年、手術ロボットなどの革新的な医療機器の研究開発を促進する政策を相次いで打ち出している。2024年だけで10機種以上の国産手術ロボットが販売認可を取得した。卓業医療の構造化光による3Dスキャン技術は、高いコストパフォーマンスと臨床適応性の両方を備えていることから、高精度穿刺分野で海外ブランドの独占状態を打破する可能性を指摘されている。
(注1)物理的身体を持ち、環境との動的相互作用を通じて知能を発揮する次世代ロボットシステム。
(注2)特定のパターンの光を物体に投影し、その光のゆがみをカメラで捉えることで、物体の形状を計測する技術。
(注3)腫瘍に針を刺し、熱や低温で組織を破壊する局所療法。
(注4)粒子線をがん細胞に照射する治療法。
(董玥涵)
(中国)
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