チェコ政府、原発増設契約を韓国企業と締結
(チェコ、韓国)
プラハ発
2025年06月10日
チェコ政府は6月4日、同国ドコバニ原子力発電所の原子炉増設に関して、2024年7月に発表された入札結果により、優先交渉権を得た韓国水力原子力(KHNP)(2024年7月25日記事参照)とドコバニ発電会社II(EDU II、国家が80%、チェコ電力が20%所有)が契約を締結したと発表した(プレスリリース、チェコ語)。
当初、契約締結は2025年3月までに行う予定だったが、2024年8月に、同入札に参加し敗退したフランス電力(EDF)と米国ウェスチングハウスが、チェコの経済競争保護局に対してKHNPの入札条件違反の疑いがあるとして審議を要請したことから、ブルノ地方裁判所が、同局の結論が出るまでKHNPとの契約締結を差し止める仮処分命令を下した。そのため契約締結が延期されたが、これに対してEDU IIとKHNPが最高行政裁判所に提訴し、同裁判所がブルノ地方裁判所の判決を覆したため、今回の契約調印に至ることとなった。
ペトル・フィアラ首相は、今回の契約案件に関して「チェコ近代史における最大規模のプロジェクトの1つ」とした上で、「チェコの質の高い生活水準と繁栄を維持し、経済競争力を確保するため、チェコの家庭と経済がリーズナブルな価格で十分な電力を得ることを保証するもの」とその重要性を強調した。
同契約の対象はドコバニ原発の原子炉2基の増設で、これに追加してテメリン原発の2基増設もオプションとして含まれている。ドコバニ原発における原子炉増設の契約価格は1基あたり2,000億コルナ〔約1兆3,200億円、1コルナ=約6.6円(6月5日チェコ国立銀行為替レート)〕。ズビニェック・スタニュラ財務相は、チェコにとって有利な価格と評価している。また、建設における現地調達率に関しては、「チェコのサプライヤーが占める割合を高水準とすることで韓国側と合意しており、最大60%に達するとみられている」と政府は発表している。ルカーシュ・ブルチェック産業貿易相は「(現地調達率は)現時点ですでに約30%が保証されており、建設終了時までには60%を達成する計画」と明言している。
なお、契約締結の遅れは今回の増設スケジュールに影響を及ぼすことなく、政府がKHNPを優先交渉先に決定した2024年7月に発表した、2029年建設開始、2036年試運転開始の予定に変更はない(2024年7月25日記事参照)。
(中川圭子)
(チェコ、韓国)
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