日系自動車部品メーカー、チュニジア企業に投資

(チュニジア、フランス)

パリ発

2025年06月06日

欧州・アフリカ地域を中心に自動車、航空機、鉄道車両用ベアリングの製造・販売を行っているNTNヨーロッパは、5月19日付でチュニジアの自動車用ショックアブソーバ(サスペンションを構成する部品)メーカーのラ・チュニジー・メカニック(以下、LTM)の株式の35%を取得した。LTMは2010年の創立、チュニジアのチュニスに所在し、自社ブランド製造とOEMを受託する。

NTNヨーロッパの照井克彦欧州・アフリカ州地区総支配人はジェトロのインタビュー(5月26日)において、チュニジア企業への資本参加を3つの側面から説明した。まず、「NTNグループは、中期経営計画の重点施策として、アフターマーケット事業(注)の拡大に取り組んでおり、今回のチュニジア企業への資本参加はその一環だ。同事業において、商品ラインアップの拡充と販売網の強化を進める中、NTNグループが生産するコーナーモジュール製品(ドライブシャフトベアリング、アクスルベアリング、トップストラットマウントなど)と関連性の高いショックアブソーバを新たな取り扱い製品として選定した」と説明した。次に、チュニジア企業を選んだ理由として、「NTNは2010年にフランスの大手ベアリングメーカーSNRの買収を機に、フランス南東部のアヌシーに欧州本社を移転し、元SNRのスタッフを中心に事業を展開している。ショックアブソーバのメーカー選定に当たり、フランス語圏で自動車部品メーカーが多く存在するチュニジアで数社の候補の中から技術面と価格面で優位に立つLTMを最終的に選んだ。LTMからの輸入販売ではなく、同社に資本参加した理由としては、他社から購入した製品を顧客に提供すると、マーケティング面で弱いので、NTNの製品として売るには生産者の一員になることが重要であると判断した」と述べた。3番目に、「ショックアブソーバメーカーとして、市場におけるブランド認知度を高めるとともに、LTMへの製造・管理面での日本の技術導入も可能となり、コスト削減につながれば、両社のプラスとなる」とのことだ。

今後のアフリカでの事業展開については、「アフリカで唯一販売拠点を持つモロッコは、SNRがルノーのグループ会社だったことで、2012年のルノーのモロッコ進出後、ルノーとともに同国に進出した経緯がある。現時点では特にアフリカ諸国へ展開する戦略はないが、日本の自動車メーカーがアフリカで生産を開始することになれば、LTNの進出を考える可能性が生まれる」とした。チュニジア企業に関しては、製造スタッフの勤勉さと成長性、さらにはコミュニケーションの容易さを挙げた。

NTNヨーロッパの今回のチュニジア進出は、欧州企業の買収後、欧州を起点として北アフリカに進出した日系企業の例としても注目される。

(注)アフターマーケットとは「購入後のアフターサービス市場」を意味し、消耗品や補修パーツの供給、保守・修理サービス、周辺機器の販売など、製品の販売に付随して生まれるアフターサービスに関連した取引が行われる市場のこと。

(渡辺智子)

(チュニジア、フランス)

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