米半導体大手ウルフスピード、事業継続しつつ破産法適用申請を含む再編プロセス開始

(米国、日本)

アトランタ発

2025年06月26日

米国ノースカロライナ州のシリコンカーバイド(SiC、注1)材料やデバイスの製造大手のウルフスピードは6月22日、米連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を近日中に申請すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同社は総債務の約70%に当たる約46億ドルの債務削減などを行う再編支援契約(RSA)を主要債権者と締結する。また、RSAにより、既存の転換社債保有者による完全な保証付きで、第2順位転換社債の形式で2億7,500万ドルを新たに調達する。RSAが想定する取引を実施するため、同社は近日中に再建計画の事前承認を求め、その後、米連邦破産法第11章に基づく再建手続きの自発的申立てを提出する予定で、これらのプロセスを2025年9月末までに完了する見込みだ。なお、このRSA締結で、主要債権者である日本のルネサスエレクトロニクス(本社:東京都江東区、注2)は、2025年12月期第2四半期累計連結決算で、約2,500億円の損失を計上する可能性があると発表した。

ウルフスピードの発表によると、再編プロセスを進めるとともに、顧客へのサービス提供を継続し、サプライヤーから提供される商品やサービスに対して、通常の事業運営の一環として支払いを継続する予定だ。

また、再編後は事業でのキャッシュフロー生成により、完全に資金調達される見込みで、ノースカロライナ州シラーシティーで建設中の新工場も近日中に開業予定だとした(ABC11 6月23日)。

ウルフスピードは、同社製品が使われる電気自動車(EV)の需要低迷や経営陣の異動、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)に関する不確実性といった課題に直面していた(「ビジネス・ジャーナル」6月23日)。同社はバイデン前政権時に、CHIPSプラス法に基づく最大7億5,000万ドルの助成金を取得することで商務省と予備的覚書を締結していたものの、ジョー・バイデン前大統領の退任前に助成金を取得するに至らなかった。CHIPSプラス法に否定的なトランプ政権下では助成自体が見直される可能性も高い。

(注1)従来のパワー半導体材料のシリコン(Si)と比較して、省エネ性能に優れ、次世代のパワー半導体材料の1つとされる。

(注2)ルネサスは2023年、ウルフスピードとの間で、SiCウエハーの供給契約を締結し、20億ドルの預託金を同社米国完全子会社経由で提供し、2024年10月には修正契約を締結して、同預託金の元本相当額は総額20億6,200万ドルとなっていた。

(檀野浩規)

(米国、日本)

ビジネス短信 91b366ab0db8d4af