バジャジ・オート、KTM再建に向け経営権取得を視野に支援

(インド)

ムンバイ発

2025年06月02日

インドの二輪車大手バジャジ・オートは、経営難によって2024年に法的再建手続き(事実上の倒産状態)に入ったオーストリアの大手オートバイメーカーKTM(2024年12月10日記事参照)の再建を支援し、経営権の取得を目指す。5月21日に株式市場向け開示とプレスリリースを通じて公表した。

バジャジ・オートはこれまでもKTMグループに出資してきたが、今回はその持ち分を通じて実質的な経営主導権を握る方針を明確にした。具体的には、KTMの親会社の支配株主であるオーストリア企業ピエラー・バジャジ(PBAG)の株式50%を将来的に取得する方針だ。これにより、KTMグループ全体の経営にかかる意思決定に直接関与できる体制を築く。

今回の支援は、KTMが進めている法的再建手続きを下支えするもので、債権者への支払いや事業再開に必要な資金として、最大8億ユーロを拠出する。既に2億ユーロを投入済みで、残る6億ユーロについては、KTMへの担保付き融資4億5,000万ユーロと、PBAGによる転換社債1億5,000万ユーロを通じて実行される。

バジャジ・オートはインド国内で広く二輪車や三輪オートリキシャを展開し、グローバルにも存在感を高めている。2007年以降、KTMと技術・生産で協力関係を築いており、インドのマハーラーシュトラ州プネ近郊でKTMの一部モデルを製造し、世界各国へ輸出している。

バジャジ・オートは今回の動きで世界的ブランドKTMとの関係を深め、同社の国際展開の加速が予想される今後は、規制当局の承認を得た上で、KTMグループの経営体制の見直しや開発・生産面での連携を強化するとともに、外部パートナーとの協業も模索していく構えだ(「エコノミック・タイムズ紙」5月22日、「NDTV」5月22日)。

なお、KTMグループを長年率いてきたオーストリアの実業家ステファン・ピエラー氏は、再建手続き完了後の6月をめどに、経営の第一線から退く予定だ。

(篠田正大)

(インド)

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