ノルウェー政府、大規模CCSプロジェクトの始動を発表、ローンチイベントも開催
(ノルウェー、スイス、スウェーデン、日本)
ロンドン発
2025年06月23日
ノルウェー政府は6月17日、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)プロジェクト「ロングシップ」の開始を発表した。政府は同プロジェクトについて、同国史上最大の気候変動への投資で、欧州で初めてCO2の回収・輸送・貯留というCCSのバリューチェーン全体を統合するとしている。
同プロジェクトでは、ノルウェー南部ブレビクにあるドイツ企業ハイデルベルク・マテリアルズのセメント工場と、オスロの地域熱供給企業ハフスルンド・セルシオがオスロで計画中の廃棄物焼却施設などから排出されるCO2を回収する。回収したCO2を船で輸送し、ノーザン・ライツ(2022年6月17日記事参照)が管理するベルゲン近郊の海底2,600メートルに貯蔵する。セメント工場で回収されたCO2の最初の輸送は6月初旬に実施され、CO2は現在タンクで貯蔵されており、海底貯留層への圧入は8月に開始する予定。
CO2の輸送・貯留については2段階(フェーズ)の開発が進められており、第1フェーズでは、年間150万トンを貯留する。第2フェーズでは、陸上ターミナルの拡張、貯蔵タンクの増設、ポンプの強化、沖合の圧入井の増設などを通じ、貯留能力を年間500万トンまで拡張する予定だ。エネルギー省は同日、第2フェーズについて開発計画を承認した。これに合わせて、ノーザン・ライツはスウェーデンのエネルギー企業ストックホルム・エクセルギと、ストックホルム地域のバイオエネルギー施設から年間最大90万トンのCO2を受け入れる契約を締結した。
スイスと2国間協力協定を締結
6月17日と18日の両日、オスロとブレビクで「ロングシップ」のローンチイベントが開催された。オスロでは、川崎汽船が受注した液化CO2船「ノーザンパスファインダー」の命名式が行われたほか、ノルウェー・スイス2国間でのCO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)およびCO2除去に関する協力協定の締結も発表された。ノルウェー政府はこの協定を、両国の国境を越えたCO2の輸送・貯蔵に関する法的枠組みを確立するものとして位置づけている。
(バリオ純枝)
(ノルウェー、スイス、スウェーデン、日本)
ビジネス短信 8e48c0492f6197d1