中国企業の1~4月の対外直接投資額は7.5%増、データセンターや車載電池・材料の案件が上位に
(中国、ASEAN)
調査部中国北アジア課
2025年06月04日
中国商務部は5月22日に開いた定例会見において、2025年1~4月の中国の対外直接投資額が前年同期比7.5%増の575億4,000万ドルだったと発表した。うち、非金融類の対外直接投資額は5.6%増の510億4,000万ドルだった。
同期間における中国企業による主な対外投資案件をみると(注1)、データセンターの建設に関わるデジタルインフラ関連分野の投資のほか、車載電池および同材料に関わる投資案件などが金額上位に挙がった(添付資料表参照)。
うち、投資金額が最大だったのは、動画共有サービス大手バイトダンス(字節跳動科技)傘下のシンガポール法人TikTok Pte.によるタイでのデータセンター建設案件だった。タイ投資委員会(BOI)は2025年1月29日付で同投資案件の承認を発表。投資総額は37億6,000万ドルに及び、データセンターの稼働は2026年に予定されている。
このほか、データセンター運営会社の北京ハオヤンクラウド&データテクノロジー(北京皓揚雲数据科技)によるタイへの投資案件(投資額2億1,700万ドル)も金額順で8位に挙がった。BOIは3月17日付で同投資案件の承認を発表している。
なお、フィナンシャル・タイムズのデータベース「fDi Markets」によれば、2024年の中国企業によるデジタルインフラ関連の対外投資案件は27件だった。うち、東南アジアへの案件が13件と約半数を占め、タイのほか、マレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピンへの投資案件がみられた。
中国商務部は5月21日、中国とASEANとの自由貿易協定(ACFTA)のアップグレード(ACFTA3.0)の交渉が全面的に妥結したと発表した(注2)。既存分野の見直しに加え、デジタル経済を筆頭に、グリーン経済、サプライチェーン連結性、零細・中小企業(MSMEs)、競争と消費者保護の5分野で新たな章が設けられた。
新設章のうち、デジタル経済に関して、商務部国際貿易経済協力研究院の王雪坤院長は、5月30日付の「中国経済網」に掲載された寄稿文において、「中国とASEANは、デジタルインフラにおける『ハード面の接合性』と、電子インボイスや電子決済などのシステムにおける『ソフト面の接合性』を強化し、個人情報保護、デジタル貿易基準、ペーパーレス貿易、サイバーセキュリティーに関するルールの接合を推進することで、オープンイノベーションエコシステムを構築できる」と指摘。また、「デジタル産業における技術、市場、規模において優位性を有する中国との協力により、ASEANの製造業の高度化や、デジタル産業の変革がもたらされる」との見方を示した。
(注1)フィナンシャル・タイムズのデータベース「fDi Markets」および各社発表などに基づき整理したもの。
(注2)2022年11月の交渉開始から9回にわたる正式交渉を行い、2024年10月に実質的妥結を発表していた(2024年10月15日記事参照)。今後、各国での批准手続きを経て、2025年内に正式署名を目指すとしている。
(小林伶)
(中国、ASEAN)
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