米FRB、政策金利を据え置き、金融政策の先行きはFOMC参加者の見解わかれる

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月20日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月17~18日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を大方の市場予想どおり、4.25~4.50%で据え置くことを決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料図参照)。政策金利据え置きは4会合連続で、決定は全会一致だった。

今回発表した声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの前回からの変更点は、(1)失業率に関する表現変更(なお低水準にある)、(2)経済の不確実性に関する評価の若干の修正(先行きの不確実性は減少したが、依然として高い)、(3)(2)に関連して前回記載していた「失業増加とインフレ加速のリスクは高まった」との文言の削除の3点だが、傾向としては大きな変更はない。

また、今回はFOMC参加者による経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも示している(添付資料表参照)。金融政策の前提となる経済指標に関しては、成長率は2025年が1.4%(前回1.7%)、2026年は1.6%(前回1.8%)に下方修正した。インフレ率は、2025年の個人消費支出(PCE)指数が3.0%(前回2.7%)、コアPCE指数(エネルギーと食品を除いた物価指数)は3.1%(前回2.8%)に、2026年はPCE指数、コア指数ともに2.4(前回はともに2.2%)に引き上げた。失業率は、2025年が4.5%(前回4.4%)、2026年も4.5%(前回4.3%)に引き上げた。今後、スタグフレーション的な環境下で困難な金融政策運営を強いられる可能性が高いとみる参加者が多いことを示唆している。こうした経済見通しの下、FF金利の誘導目標については、2025年は依然として2回分(注)の利下げが予測中央値となっているものの、その内訳をみると、0回が7人(前回4人)、1回が2人(前回4人)、2回が8人(前回9人)、3回が2人(前回2人)と、今後の金融政策に対する参加者のスタンスが大きく分かれていることがわかる。また、2026年の利下げ幅も1回分(前回2回分)に減少している。

FOMC後の会見で、パウエルFRB議長は賃金上昇や失業率の水準などを例に挙げて、労働市場が健全な状態にあることや、インフレ率も現時点では低下傾向にあることなどに触れつつ、「政策スタンスの調整を検討する前に、経済の見通しについてより多くの情報を待てる状況にある」と述べ、利下げを急ぐことなく、関税引き上げの影響を見極めながら、金融政策を運営していく考えを示した。

記者との質疑で、関税引き上げに伴う価格上昇が今後数カ月で顕著に表れる可能性について言及したほか、中東での紛争激化に伴うエネルギー価格の上昇にも留意が必要と述べるなど、今後のインフレに対する警戒感を色濃くにじませる場面もあった。

(注)通常、FF金利は0.25ポイントの幅で利上げ・利下げが発表される。

(加藤翔一)

(米国)

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