経済価値を生まない中国系の「ゼロバーツ」工場摘発

(タイ)

バンコク発

2025年06月20日

タイ工業省は6月15日、チャチューンサオ県の中国系リサイクル工場を摘発したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。違法操業や環境汚染があったとして、工業省は同社を提訴するとともに、工場の物品差し押さえと業務停止命令を出している。

摘発されたのは、同県プラエンヤーウ郡の中国系企業ヨンタン・タイで、海外からモーターや電線などの金属スクラップを輸入・選別し、鉄や銅、アルミニウムを国内外に販売していた。工業省は同社の操業で環境汚染などの疑いがあったとして、エーカナット・プロムパン工業相の指示により、同省の特別調査チーム「スットソーイ」を派遣していた。

調査の結果、ヨンタン・タイによる環境汚染への関与が判明し、同社を所有するジンフェン・ジョウ氏による工場の無許可拡張や、許可証に記載されていないバッテリー部品や電子機器のスクラップの保有を確認した。さらに、同社は香港企業と連携し、日本から選別されていない電子廃棄物を輸入。鉄は国内の製鉄所に販売し、銅やアルミニウムは香港に再輸出するなどしていた。処理過程で残った廃棄物や粉じんはタイ国内に放置し、環境汚染や水質汚濁を引き起こしたとの調査結果を示した。

調査に同行した工業省のチティパット・チョーティデーチャイチャナン大臣補佐官は「米国の関税措置以降、大量の中国系投資家が違法な『ゼロバーツ』(注)型リサイクル事業を展開している」と述べた。リサイクル工場の許可発行手続きを見直すよう、エーカナット工業相に提案する予定という。また、チティパット補佐官は「これらの事業はタイに経済的価値をもたらさず、環境汚染や国民の健康被害を引き起こしている」と述べた。工業省は18日にプラチンブリ県で別企業の違法操業による倉庫7カ所で計8,000トン以上の危険物の廃棄を摘発しており、チティパット補佐官は「倉庫の各所有者の大半が中国国籍、または台湾籍で、無許可で操業していた」と報告している(6月19日付「バンコク・ポスト」紙)。

(注)「ゼロバーツ(ゼロドル)」とは、タイに経済的価値をほとんど生み出さない事業活動を指す。利益を海外に移転したり、タイを安価な輸出の通過点として利用したりする傾向がある。タイ工業連盟(FTI)は「ゼロバーツ」工場がタイ産業に与える影響を懸念しており、外国人による工場設立基準の厳格化や取り締まり強化を求めている(5月29日付「バンコク・ポスト」紙)。

(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ)

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