米議会予算局、2023年の移民急増に伴う州・地方財政への影響を試算
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月11日
米国議会予算局(CBO)は6月5日、2023年中の移民急増が州・地方政府の財政に及ぼした影響について試算結果を発表した。同年の移民流入数を約330万人と試算
したが、新型コロナウイルス禍前の年間平均流入数の年間90万人を大きく上回るものだ。
報告では、人口増によって変動する(1)売上税、所得税、財産税などに係る歳入増、(2)教育や住居関連サービス、国境警備費の増大などの歳出増を直接的な影響として算定している。これに加え、人口増加がもたらす経済活動の活発化に伴う影響や、追加的な措置の必要性なども潜在的な影響として合わせて算定している。直接的影響(92億ドルの負担増)、潜在的影響(98億ドルの負担増)ともに、歳出増が歳入増を上回る結果となっている。CBOは2024年7月に連邦財政は歳入増の効果が上回り、10年間で9,000億ドルの財政赤字削減につながるとの試算を発表しているが、教育や住居関連サービスなどにより、地方レベルでは歳出増による負担が増す可能性が示されている。
(1)直接的な影響(歳入増)
歳入増に関する直接的な影響は、売上税で71億ドル、固定資産税で7億ドル、所得税で16億ドル、その他の税収で約7億ドルが増収になり、全体では101億ドルの増収になったとしている。
(2)潜在的な影響(歳入増)
歳入増に関する間接的な影響は主として、(1)移民流入に伴う住宅ニーズの高まりにより、住宅価格が上昇し、これによって固定資産税が約8億ドル増加、(2)生産性の向上などを通じて、企業・個人の収益が増加したことに伴って、法人税や所得税などが増加し、税収が約80億ドル増加したとしている。
(3)直接的な影響(歳出増)
歳出増に関する直接的な影響は、初等・中等教育の費用が57億ドル(55万人分)、住居・食料・法的サービスの費用が33億ドル、国境措置に27億ドル、メディケイド(低所得者向け医療保険)や子供向け医療保険、州が行う代替プログラムに5億ドル、困窮世帯への所得補助プログラム(TANF)などに4億ドル、刑務所への収監に8億ドル、その他の一般行政サービスに61億ドルが必要になったとしている。
(4)潜在的な影響(歳出増)
上記の直接的な歳出増に加え、初等・中等教育に関しては、英語習得のための追加指導に要する費用や、財政支出上のテクニカルな要因の反映などにより、37億ドルが追加的に必要となると試算している。また、税金の徴収や交通サービスなど上記の「その他一般行政サービス」に該当するものの一部として、55億ドルが追加的に必要になると試算している。
(加藤翔一)
(米国)
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