ハンガリー国内最大のエネルギー貯蔵施設が稼働、スマートグリッド化が加速

(ハンガリー、スイス)

ブダペスト発

2025年06月25日

欧州の総合エネルギー企業METグループ(本社:スイス)は6月19日、ハンガリーの首都ブダペスト近郊のドゥナメンティ発電所で、国内最大規模となる出力40メガワット(MW)、容量80メガワット時(MWh)のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の運転を開始した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。設備・機器類は中国のファーウェイ・テクノロジーズが提供し、電力エネルギー設備の建設を手掛けるハンガリーのフォレストビルが主契約者として工事を請け負った。METグループの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同システムは、ブダペスト全域の装飾照明と公共照明を4時間供給するのに十分な電力容量で、再生可能エネルギー(再エネ)の変動吸収や電力系統の安定化に大きく寄与する。

背景には、ハンガリーでの再エネ、特に太陽光発電の急拡大がある(2024年9月19日記事参照)。英国のシンクタンクのエンバーの報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2024年には同国の総発電量の25%を太陽光が占めており、5テラワット時(TWh、注1)以上の太陽光発電を導入している国の中で、電力構成に占める太陽光発電の割合が最も高い国になったという。これに伴い、変動性の高い再エネの統合や需給調整が急務となっている。

こうした中、ハンガリーではスマートグリッド(注2)の整備が進行しており、政府やEUの復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)の支援を受けて、METグループやドイツのエネルギー大手エーオン(E.ON)、ハンガリーの送電企業MAVIRや国有エネルギー企業MVMなどの大手エネルギー関連企業が開発を主導している。エーオンは2024年に、既存の40万台超のスマートメーターに加え、16万5,000台以上を追加導入すると発表し、スマートメーターの大量導入が進んでいる。一方、MAVIRとMVMは、太陽光発電、風力発電向けにそれぞれ60MWh、20MWh規模のバッテリー設備を整備し、大規模なエネルギー貯蔵施設の導入を開始している。また、エネルギー省による一般家庭向けの「ナップエネルギー・プラス・プログラム」によって、太陽光発電と併設されたバッテリーシステムも普及している。

上記のドゥナメンティ発電所でのエネルギー貯蔵システムの開所式でハンガリー蓄電池協会のカデルヤーク・ペーテル会長は「確立されたコスト効率のよい技術を用いてハンガリーの再エネ源を可能な限り広範に活用するために、あらゆる手段を尽くさなければならない。そのため、当協会はグリーンエネルギー転換を最優先課題とするハンガリーのエネルギー政策の取り組みを支持している」と強調した。

(注1)テラ(T)は、10の12乗(1兆)倍を表す単位。

(注2)情報通信技術(ICT)を活用して電力の需給を管理し、効率的なエネルギー供給を実現する次世代の電力網。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー、スイス)

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