アフリカ開発銀行総裁選でモーリタニアのタハ氏が当選

(アフリカ、モーリタニア)

パリ発

2025年06月09日

アフリカ開発銀行(AfDB)グループ年次総会がコートジボワールのアビジャンで5月29日に開催され、5人の候補者の中から、モーリタニア国籍のシディ・ウルド・タハ氏が第9期総裁に選出された。任期は2025年9月1日から5年間となる。同銀行グループのアフリカ諸国および域外加盟国81カ国(注1)の財務相、経済相または中央銀行総裁で構成されるアフリカ開発銀行理事会による投票で、総投票数の76.18%、アフリカ諸国代表の72.37%の得票率となり、過半数を大きく上回った。

タハ氏は経済学の博士号を有し、2008年からモーリタニア経済・開発相、また2015年から10年間はアフリカ経済開発のためのアラブ銀行(BADEA)(注2)の総裁を務め、同行の包括的な改革を主導した。同氏の閣僚および国際金融機関トップとしての経験とその成果、さらには2024年度のアフリカ連合(AU)議長を務めたモーリタニアのモハメド・ウルド・エルガズアニ大統領(2024年3月1日記事参照)の積極的な後押しと外交ネットワークが同氏の当選に寄与した。また、米国が開発援助メカニズムから撤退し、アフリカ大陸の低所得国向けのAfDBの基金への5億ドルの拠出を削減する意向を表明する中、アラブ諸国の積極的コミットメントがさらに求められる状況が、アフリカとアラブ諸国の接点を構築するポテンシャルを持つモーリタニア出身のタハ氏の大勝につながった、とメディアは分析している。

タハ氏は当選直後のフランス語によるあいさつで、「アフリカが寄せてくれた信頼と栄誉に感謝するとともに、それに伴う責任と義務を自覚している」と述べ、「さあ、仕事に取り掛かろう。準備は万全だ」と英語で締めくくった。

(注1)アフリカ開発銀行グループは、アフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ開発基金(ADF)、ナイジェリア信託基金(NTF)から構成される。AfDBは1964年設立。現在の加盟国は81カ国(アフリカ諸国:54カ国、域外国:日本を含む27カ国)で、中所得国および民間セクター事業を対象に準商業ベースまたは商業ベースの融資を行う。2,090億ドルの授権資本と堅実なリスク管理などにより、主要格付け機関から最優良の信用格付AAAを受けている。日本はナイジェリア、米国、エジプトに次ぐ第4位のAfDBへの拠出国(2025年5月)。

(注2)アフリカ経済開発のためのアラブ銀行(BADEA)は1973年創立。アフリカ諸国に開発融資を提供するアラブ連盟傘下の開発銀行。

(渡辺智子)

(アフリカ、モーリタニア)

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