医療・ヘルスケア分野のスタートアップ、シドニーで関係構築へ

(日本、オーストラリア)

大阪本部イノベーション課

2025年06月10日

ジェトロは5月5~9日、日本の医療・ヘルスケア分野のスタートアップ8社をオーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州シドニーに派遣し、現地関係機関とのネットワーク構築に向けたプログラム「HealthTech Gateway」を実施した(注)。世界で活躍する医療機器・ヘルスケアスタートアップの輩出を目的としたプログラムは、オーストラリアの医療・ヘルスケア分野のアクセラレーターであるメドテック・アクチュエーターと連携している。参加企業は2024年10月以降、規制や保険償還、治験などについての集中講義や専門家とのメンタリング、ピッチのブラッシュアップなどを通じて準備を進めてきた。

現地では、NSW州政府の運営するスタートアップ支援施設「シドニー・スタートアップ・ハブ」 、シドニー北西部の学術医療センターにあるマッコーリー大学インキュベーターや、西シドニーのヘルスケア専門イノベーション施設「シカダ・イノベーション・ヘルスハブ」、国内最大のエコシステム拠点「シドニー スタートアップハブ」を訪問した。現地のエコシステムでは、起業家、研究者、投資家が協力し合うコミュニティが形成され、資金調達やネットワーキングの機会、トレーニングプログラムなどが提供される。治験など研究開発費用にかかる税額控除などの優遇措置もあり、メドテック系スタートアップは研究開発を効率的に進めることができる環境になっている。

視察や講義を通して、公立と私立の医療機関における医療機器などの保険償還方法や費用負担の仕組みの違いや、保健省傘下で医薬品・医療機器の管理を行う薬品・医薬品行政局(TGA)をはじめとする公的関連機関の役割、関連規制などについて学ぶとともに、医療関係者やベンチャーキャピタルなどと関係構築を行った。

5月7日と8日は、シドニー国際会議場でメドテック分野カンファレンス「AusMedtech(オース・メドテック)」に参加した。このイベントはオーストラリアの医療系政府機関、大学、ベンチャーキャピタルなどが集まって、メドテック業界を発展させることを目的としており、メドテック系スタートアップを成功に導くための機会も提供している。参加企業は、医療系大学・CRO(開発業務受託機関)・ベンチャーキャピタル(VC)などと個別商談し、オーストラリアの医療機器承認に必要なプロセスである医療機器品質管理システムの説明など、ビジネス展開に向けた具体的なアドバイスを受けた。

最終日は、シドニー市内の大規模な医療、教育、研究のハブである「ランドウィック・ヘルス・アンド・イノベーション・プリシンクト」で、ニューサウスウェールズ大学の医療関係者から、メドテック促進のプラットフォームなどについて説明を受けた。このプラットフォームは、臨床医、技術者、起業家が協力して「未解決の医療ニーズ」の解決策を開発することを目的とし、医療、ビジネス(市場)、規制、技術の各方面から総合的な支援が受けられるもので、参加企業は熱心に聞いていた。終了後は大学関係者らと意見交換し、海外展開の道筋をより明確にした。

参加企業からは、「現地VCから投資したいと申し出があった」「治験の誘いや投資をしたいという連絡があった」「共同研究の話が進んでいる」などの声が聞かれた。

写真 プログラム参加者の施設訪問(ジェトロ撮影)

プログラム参加者の施設訪問(ジェトロ撮影)

(注)同プログラムは、ジェトロと経済産業省が主催する起業家育成プログラム「J-Star X」の一環。「HealthTech Gateway」の詳細はCohort Overview外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。参加企業はオーストラリアまたは欧州へ渡航している。

(原田結花、坂本陽平)

(日本、オーストラリア)

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