消費者への社会的なメッセ―ジ発信が模倣品対策に有効、英国最新調査

(英国)

デュセルドルフ発

2025年06月24日

英国知的財産庁(UKIPO)は6月17日、「模倣品追跡調査(Counterfeit Goods Tracker)」の第4弾(Wave4)を公表した。この一連の調査は、模倣品(偽造品)の消費実態を継続的に把握し、知的財産権の保護と消費者の行動変容を促すための施策立案や啓発活動の基礎資料とするため、2019年から実施されている。

今回の調査は、2023年6月から7月にかけて実施されたオンライン調査(回答者数5,072)を中心に、美容・衛生の偽造品購入抑制に関するキャンペーンにおけるメッセージ効果の定性調査(同64)、および定量調査(同1,538)の3段階構成で行われた。これまでの第1弾(2019年)、第2弾(2021年)、第3弾(2022年)と同様に、英国成人を対象に全国規模で実施され、模倣品の購入傾向を時系列で比較可能なかたちで収集している。

今回の調査では、模倣品の購入経験があると回答した人は全体の24%で、前回の第3弾から5ポイント減少した。そのうち現在も模倣品を購入していると答えた人は15%で、こちらも前回から4ポイント減少している。また、76%の回答者は「模倣品を一度も購入したことがない」と回答しており、模倣品に対する拒否感が一定程度存在していることが示された。

年齢別にみると、模倣品の購入は若年層に多く見られた。特に25〜34歳の層では27%と相対的に高く、18〜24歳では20%、35〜44歳では21%が現在も購入していると回答している。これに対し、45歳以上では購入率が大きく下がり、55歳以上ではわずか7%にとどまった。

カテゴリ別にみると、「衣類・靴・アクセサリー」と「スポーツ用品」でそれぞれ12%の回答者が過去に模倣品を買ったことがあるとして最も多く、次いで「玩具」「電気製品」が9%で並んだ。「玩具」カテゴリは前回の第3弾で一時的に増加したが、今回は第2弾の水準に戻った。

購入チャンネル(複数回答)に関しては、オンライン購入が引き続き主流で、「化粧品・トイレタリー製品」ではオンライン購入が6ポイント増加した。パンデミック後の消費行動の変化を反映して、全般的には対面購入は2019年の第1弾調査時に比べ低調で、オンライン購入が増加傾向にある。一方で、対面での購入も一部カテゴリで増加しており、「スポーツチームのスポーツウェア関連商品」では13ポイント、「電子アクセサリー」では11ポイントの増加が見られた。

メッセージ効果の定性調査では、模倣品による肌トラブルやアレルギー反応などの健康被害を訴えるビジュアルのメッセージ、そして児童労働の実態を描いたメッセージが、参加者の感情に強く訴えかけ、行動変容を促す可能性が高い(最も効果的)と評価された。定量調査でも同様の傾向が見られ、健康・安全に関するメッセージでは91%、児童労働に関するメッセ-ジでは86%の回答者が「購入をやめる」あるいは「購入をやめる可能性がある」と回答した。これらの結果から、消費者の行動を変えるためには、個人の健康への直接的な影響や、社会的な倫理問題を訴えるメッセージが特に有効であることがうかがえる。

(吉森晃、佐藤吉信)

(英国)

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