英政府、インフラ戦略を公表、今後10年間で7,250億ポンドを投資
(英国)
ロンドン発
2025年06月23日
英国政府は6月19日、10年間にわたるインフラ戦略(以下、本戦略)を発表した。本戦略は、労働党が2024年7月の総選挙における公約で掲げていたもの。インフラ投資について効果的かつ効率的な資金の拠出に向けた長期的な計画を打ち出すことで、投資誘致や国内サプライチェーンの強化および雇用の創出に必要な確実性および安定性を提供し、インフラの計画・実行の改善に向けて連携して取り組むとしている。このために、今後10年間で最低でも7,250億ポンド(約142兆1,000億円、1ポンド=約196円)を投じるとしている。そのうち最低でも90億ポンドについて、医療、教育、司法施設の重要な維持管理ニーズに対処するために2025年度(2025年4月~2026年3月)に割り当てる。政府は、学校や病院といった社会インフラを道路や鉄道などの経済インフラと同等の重要性を持つものとして認識し、両種のインフラを対象とした包括的なものとして本戦略を位置づけている。
本戦略は、「成長の加速に向けたインフラに対する新たなアプローチ」「民間投資の動員」「国内各地の成長の実現」「クリーンエネルギー大国」「質の高い社会インフラの実行」「環境の改善」の6つの章からなる。
「成長の加速に向けたインフラに対する新たなアプローチ」では、新設する「国家インフラ・サービス変革局(NISTA)」(2024年10月21日記事参照)を通じて、インフラ政策、戦略、実行を統合し、プロセスのさらなる効率化に向けた改革の実施や民間部門との連携強化を図るとしている。また、大規模プロジェクトに関しては、ガバナンスや資金の拠出に関し、バリュー・フォー・マネー庁(Office for Value for Money、OVfM)を通じ各プロジェクトに合わせた手法で取り組むとしている。さらに、各種プロジェクトの情報を集約したオンラインのポータル「インフラストラクチャー・パイプライン」を7月中に設置することも発表された。
「民間投資の動員」では、官民連携(PPP)を含めインフラプロジェクトへの資金提供モデルを引き続き検討するとしたほか、規制に関しても2025年中に新たなアプローチを打ち出すとしている。
このほか、交通・通信インフラへの投資や住宅開発の加速、原子力発電所や炭素回収・貯留(CCS)、水素インフラへの投資(2025年6月18日記事参照)、病院の新設・改修、学校・大学施設の改善、刑務所の新設支援なども盛り込まれている。
(山田恭之)
(英国)
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