在シンガポール日系企業のR&D拠点、約6割が2016年以降に設置

(シンガポール)

シンガポール発

2025年06月23日

在シンガポール日系企業で研究開発(R&D)を目的に新規設立された企業は、2025年3月末時点で85社だった。このうち約6割が2016年以降に設立された。ジェトロが、シンガポール会計企業規制庁(ACRA)の認定データベンダーであるハンドシェイクス(Handshakes)から得た登記データから、企業登記の事業分類「シンガポール産業分類基準(SSIC、注1)」で主要事業と第2次事業を「R&D」と選択した企業を集計した結果、明らかになった。

R&Dを目的に設立された日系企業は2011~2015年に15社だったのが、2016~2020年に35社へと増加した。2021~2025年3月に設立されたR&D目的の日系企業は14社だった。R&D目的に設立された日系企業85社のうち、産業別にはエレクトロニクス分野(SSIC:72102)が29社と最も多く、次いで医薬(臨床開発、同72106)が28社と続いた。

シンガポール経済開発庁(EDB)は近年、同国でのR&D拠点の誘致を強化している。日系を含む外資多国籍企業がシンガポールに2011~2024年に設置した外資のR&D関連拠点の49%と約半数が、第三者の企業や研究機関と共同開発を行う外資のオープンイノベーション拠点だ(注2)。また、R&D関連拠点の約7割が米国や欧州の多国籍企業が設置した拠点である。しかし、日系企業のR&Dやイノベーション拠点の設置も増えつつある。

EDBが管轄する内外企業の固定資産投資額(FAI、コミットメントベース)のうち、R&D関連のFAIは2023年に21億シンガポール・ドル(約2,394億円、Sドル、1Sドル=約114円)と過去最高だった一方、2024年は11億Sドルへと縮小した。EDBは2024年8月、内外の企業の新規事業創出支援プログラム「コーポレート・ベンチャー・ロンチパッド(CVL)プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の拡充を発表し、スタートアップとの協業も支援対象に加えた。同庁は2025年4月までに、日系企業を含む約30社を支援したという。スタートアップとの共創やイノベーション拠点としてのシンガポールの状況については、ジェトロのレポート「2024年度スタートアップとの共創拠点としてのシンガポール」を参照。

(注1)日系企業は、日本の住所を持つ法人・個人の出資が10%以上の企業を「日系企業」と定義。その中で、企業登記の際に選択するシンガポール産業分類基準(SSIC)の主要事業と第2次事業の計5桁の業種コードで、前者の上位3桁を分類、集計。

(注2)2011~2024年にR&D関連の新規設置の報道発表があった案件(合計320件)をジェトロが集計・分類。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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