米財務省、2024年の1年間の為替報告書を公表、日本は引き続き監視対象

(米国、日本、中国)

ニューヨーク発

2025年06月06日

米国財務省は6月5日、為替政策報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は半期ごとに連邦議会へ提出しており、財・サービス貿易の輸出入総額上位20カ国・地域を対象に、今回は2024年12月までの1年間の為替政策を分析・評価した。

今回はトランプ政権下で初の報告書となったが、前回と同様、「為替操作国・地域」に該当する国・地域はないと結論付けた。為替操作国・地域の認定は、2015年の貿易円滑化・貿易執行法に基づく3つの基準(注1)の全てを満たしているかどうかを基に判断する。「為替操作監視対象」リスト(注2)には、前回の報告書(2024年11月18日記事参照)で対象国・地域となっていた中国、⽇本、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、ドイツの7カ国・地域に加え、新たにアイルランド、スイスが加わった。日本は3期連続となる。

日本が監視対象となっている理由は前回と変わらず、対米貿易黒字(640億ドル)に加え、経常収支黒字(GDP比4.8%)の2つの要件を満たしたことが要因だ。経常収支黒字の拡大は(1)円安と商品価格の低迷によって財政収支の赤字幅が縮小したこと、(2)数十年にわたる対外資産の蓄積を反映して、第1次所得収支が拡大したことの2点が理由となっている。また、期間中の円安については、主に日米金利差と金融政策への期待を反映していると述べた。

なお、為替介入については、2024年4月以降、日本が3回にわたって円買いドル売り介入したと、前回に続いて事実関係を紹介しているものの、外国為替介入を定期的に報告していて、透明性があるとしており、この点は特段問題視されていない。

中国の不透明な為替政策など問題視

中国については、2024年の対米貿易黒字は2,640億ドルと、前年と比べて110億ドル増加し、特に財貿易の黒字に関しては2,950億ドルに達すると指摘し、依然として米国の貿易相手国・地域の中で圧倒的に大きいとした。

為替に関しては、(1)為替政策を不透明なかたちで用いており、為替レートメカニズムについて、非常に限られた透明性しか提供していない、(2)中国人民銀行(中央銀行)による管理以外にも、国有銀行を使って外国為替市場に介入し、影響を及ぼしていると指摘し、今回の報告書では中国を為替操作国には指定しないものの、「将来的に(通貨)人民元高を抑制するために、公式または⾮公式のチャネルを通じて介入していることを示す入手可能な証拠がある場合、財務省が中国を為替操作国に指定することを妨げるものではない」として、将来的な指定に含みを持たせた。

その他の国・地域では、アイルランド、韓国、スイス、台湾、ドイツ、ベトナムについては、対米貿易黒字と経常収支黒字の2つの基準、シンガポールについては、為替介入と経常収支黒字の2つの基準に該当していると指摘している。

(注1)(1)大幅な対米貿易黒字(年間150億ドル以上の財・サービス貿易黒字額)、(2)GDP比3%以上の経常収支黒字、(3)持続的で一方的な為替介入(過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額)。

(注2)注1の3基準のうち2つに該当した国・地域は「監視対象」リストに登録される。登録されると、少なくともその後2回の報告書で監視対象国・地域として取り上げられ、3つの基準での改善が一時的でなく永続的なものとなっているかどうかについて評価される。

(加藤翔一)

(米国、日本、中国)

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