米半導体大手テキサス・インスツルメンツ、米史上最大級の600億ドル以上投資へ

(米国)

ヒューストン発

2025年06月23日

米国の半導体製造大手テキサス・インスツルメンツ〔Texas Instruments(TI)、本社:テキサス州ダラス〕は6月18日、同社の国内3都市7カ所の製造施設に総額600億ドル以上を投資すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。半導体製造施設への投資としては米国史上最大級だ。自動車やスマートフォン、データセンター、衛星などでの半導体需要の増加を受け、ほぼ全ての電子機器に必要なアナログチップと組み込みプロセッシングチップ製品の中でも300ミリメートル(mm)製品を低コストで安定供給することを目指す。

テキサス州シャーマンに所在する同社の最大拠点に400億ドルを投資する。同拠点では、SM1とSM2、2つの製造工場の建設が完了しており、SM1は2025年中に生産開始を見込み、さらに、SM3とSM4も建設する予定だ。同州リチャードソンの同社拠点では、2011年に世界初の300mmアナログ製品生産を開始したRFAB1施設に続く、RFAB2の拡充を行う。ユタ州リーハイでは、同社初の300mmウエハー生産工場のLFAB1の拡充と、同施設につながるLFAB2の着工を予定している。両州の拠点で合わせて約6万人以上の雇用創出を見込む。

社長兼最高責任者(CEO)のハビブ・イラン氏はTIの供給先として、アップル、フォード(自動車)、メドトロニック(ペースメーカー大手)、エヌビディア、スペースXの5社を挙げ、連邦政府とともに彼らと連携していくと述べた。アップルCEOのティム・クック氏は「TIの米国製チップはアップル製品に命を吹き込む」と述べ、TIの米国先進製造業界への投資を歓迎した。フォード社長兼CEOのジム・ファーレイ氏は、米国で販売するフォード車両の80%は国内で組み立てられていることに言及し、米国製造業に投資するTIと連携していくと語った。メドトロニックの会長兼CEOのジェフ・マーサ氏は「救命技術は半導体が頼り」とし、ヘルスケア産業にとっても半導体製造産業は重要だと述べた。エヌビディア創立者でCEOのジェンスン・ファン氏は、米国の先進人工知能(AI)インフラを発展させる上で「TIと目指すものは同じ」として連携の意を示した。スペースXの社長兼最高執行責任者(COO)のグウィン・ショットウェル氏は、同社が製造する高速サテライト・インターネット機器「スターリンク」に、TIの300mm SiGe(シリコンゲルマニウム)製品を使用しており、「世界的に需要が増え続ける高速インターネットには、TIの先進シリコン製造能力と供給の安定性が不可欠」と語った。

TIは1930年に設立され、従業員数は世界で約3万4,000人、米国では1万4,000人を雇用する。

(キリアン知佳)

(米国)

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