革新技術を選ぶCNBCのランキングで防衛技術スタートアップが初のトップに
(米国)
サンフランシスコ発
2025年06月19日
米国経済メディアのCNBCは6月10日、革新的なスタートアップのランキング「ディスラプター50」を発表し、防衛技術スタートアップのアンデュリル・インダストリーズ(本社:カリフォルニア州コスタメサ)が1位に選出された。13回目となる本ランキングの歴史において、防衛技術分野の企業がトップに立つのは初めて。ランキングには、同社を含む6社の防衛技術スタートアップがランクインし、同分野への注目の高まりとイノベーションの進展が鮮明になった。
アンデュリルは、人工知能(AI)を活用し、センサーやドローンを統合・制御するAIプラットフォーム「ラティス(Lattice)」を開発。公共安全、セキュリティー、防衛を含む多様な分野での運用が進んでいる。同社は、米マイクロソフトが米陸軍と締結した統合視覚拡張システム(IVAS)用のクロスリアリティ(XR、注1)ヘッドセットの契約を引き継ぎ、メタと提携しながらXRシステムの開発に取り組んでいる。6月5日には、シリーズGの投資ラウンドで25億ドルの資金調達を発表しており、業界を牽引している。
ランキングには、自律型無人海上艦を開発するサロニックテクノロジー(本社:テキサス州オースティン)、AIを活用し、インフラ設備検査とメンテナンスを目的としたロボットシステムを開発するゲッコーロボティクス(本社:ペンシルベニア州ピッツバーグ)、自律型ドローンとその制御システムを開発するシールドAI(本社:カリフォルニア州サンディエゴ)などがランクインしている。これら企業はサンフランシスコ・ベイエリア以外を本拠地としており、地理的多様性も示されている(CNBC 6月10日)。
民間投資増に加え、政府も防衛分野のイノベーションを推進
防衛技術分野での投資は加速している。ディスラプター50にランクインしたサロニックテクノロジーズは2月に6億ドル、シールドAIは3月に2億4,000万ドルをそれぞれ調達した。また、マッハインダストリーズ(本社:カリフォルニア州ハンティントンビーチ)も6月17日、1億ドルを調達した。
米国では、国防総省の防衛イノベーションユニット(DIU、注2)などにより、先端技術の探索やプロジェクトの公募、アクセラレーションプログラム、契約の簡素化などに取り組んできた。さらに、ドナルド・トランプ大統領は「米軍の強さと備えを再建する」という公約をかかげ選挙戦を展開し、現政権下では4月9日に、防衛調達の近代化と防衛産業のイノベーションを促進する大統領令に署名した。これらにより、防衛技術分野への注目が一層高まっている、と複数のメディアが報じている。
(注1)実世界と仮想世界を組み合わせたり融合させたりする技術や体験の総称。
(注2)商業技術およびデュアルユース(軍民両用)技術を、迅速かつ大規模に国防分野へ導入することに特化した国防総省唯一の組織。カリフォルニア州シリコンバレー(マウンテンビュー)に本部を置き、テキサス州オースティン、マサチューセッツ州ボストン、イリノイ州シカゴ、首都ワシントン(国防総省本部、ペンタゴン)に拠点を有する。
(芦崎暢)
(米国)
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