インドネシア、ジャワ島北部の巨大防潮堤構想のロードマップ策定に着手
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年06月23日
インドネシアのアグス・ハリムルティ・ユドヨノ・インフラ・地域開発担当調整相は6月17日、ジャワ島北部沿岸の「巨大防潮堤(GSW:Giant Sea Wall)」構想のロードマップ策定に着手したと表明した。この地域はGDPの約20.7%を担い、70超の工業団地、5つの経済特区、28の産業指定地域が集積する工業地域だ。一方で、地盤沈下と高潮の被害が深刻化しており、対策が急務とされる(「ビスニス」6月17日)。ユドヨノ調整相は州知事会合で「予算を効率的に活用する強固な事業スキームを計画し、早期に完成させる」と述べ、設計の精緻化と迅速な事業遂行の両立を強調した。
同ロードマップで構想される防潮堤は、バンテン州から東ジャワ州グレシックまで約500キロに及ぶ。工期は20年、総事業費は約800億ドルと試算される。まず、ジャカルタ湾周辺区間で着工を予定しており、同区間の予算規模として80億ドルが見込まれている(「ビスニス」6月17日)。
国際協力に向けた働き掛けも加速している。ユドヨノ調整相は6月16日、オランダの経済ミッション受け入れの際、中国や韓国、日本、オランダなどが投資参画に関心を示していると言及した。さらに、プラボウォ・スビアント大統領は専任担当機関「ジャワ島北岸防潮堤管理庁」(仮称)の創設を指示し、官民連携(PPP)で資金を集める考えを示している(「ビスニス」6月16日)。
ユドヨノ調整相は建設手法として、コンクリートによる直線的な堤防だけでなく、マングローブなどの自然基盤(NBS:Nature-Based Solution)と組み合わせた統合的アプローチを採用すると説明している。財源については、PPPに加え、沿岸埋め立て地や周辺土地の価値上昇益を原資に還元するランド・バリュー・キャプチャー(LVC)を活用し、国庫負担を抑える方針を示している(「カタダタ」5月9日)。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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