ジェトロ、ウルグアイ・ビジネスセミナー開催、政治経済の安定性とフリーゾーンに強み

(ウルグアイ)

企画部企画課

2025年06月20日

ジェトロは616日と18日に、ジェトロ大阪本部とジェトロ本部(東京)で、ウルグアイ・ビジネスセミナーを開催した(注1)。ウルグアイからは、アルフレド・フラッティ農牧水産相をはじめ、約30人の政府関係者や業界団体、企業関係者らが参加した。

写真 主賓あいさつをするアルフレド・フラッティ農牧水産相(ジェトロ撮影)

主賓あいさつをするアルフレド・フラッティ農牧水産相(ジェトロ撮影)

東京と大阪での開催にはともに、ウルグアイの投資輸出促進機関のウルグアイXXIのマルティン・メルカド 副長官と、ジェトロ・ブエノスアイレス事務所の西澤裕介所長が同国のビジネス環境や日系企業の進出状況について講演した。

メルカド氏は、民主主義指数や法の支配、腐敗認識指数などさまざまな指標を例示し、ウルグアイは欧州の先進国と遜色のない水準を維持しているとし、同国の安定性や信頼性が企業活動のメリットになっていると指摘した。西澤所長によると、同国には約20社の日系企業が進出しており、物流拠点としてフリーゾーン(FZ)を活用する企業、森林や食料などの資源に着目する企業、国内市場に着目する企業、その他の企業の4つに分類できる(注2)。西澤所長は日系企業のFZ活用の傾向として、「ペルーやボリビアを含む南米南部諸国向けの物流拠点として活用しており、ウルグアイに法人設立をせずにFZを利用しているケースが存在する」(注3)と強調した。

大阪で開催されたセミナーでは、2024年からウルグアイでポンプの製造・販売を手掛ける荏原製作所(注4)の黒澤信氏が登壇した。同氏はウルグアイ進出の決め手として、政治経済の安定性、周辺国へのアクセスとFZの存在、高い教育水準の3点を挙げた。また、進出後の実情として、給与水準や物価の高さ、日本食の少なさなどを指摘した。

写真 2024年にウルグアイに進出した荏原製作所の黒澤氏(ジェトロ撮影)

2024年にウルグアイに進出した荏原製作所の黒澤氏(ジェトロ撮影)

東京でのセミナーでは、20241月にウルグアイに現地法人を設立し、同年7月に国内に植林地を取得した王子ホールディングスの執行役員の安藤和義氏が登壇した。同氏はウルグアイ進出の理由として、政治経済の安定性や治安の良さに加え、良質な土壌と十分な降水量があり、樹木の成長に適した土地であることを挙げた。今後は植林地を拡大し、従来手掛けている製材事業に加え、バイオ炭やペレット、石油代替素材など、未利用材を有効活用した新規事業にも取り組んでいく方針を説明した。

写真 2024年にウルグアイに植林地を取得した王子ホールディングスの安藤氏(ジェトロ撮影)

2024年にウルグアイに植林地を取得した王子ホールディングスの安藤氏(ジェトロ撮影)

ウルグアイ運輸交通事業省(MTOP)鉄道輸送部長のウェーバリー・テヘラ氏と、国立物流研究所(INALOG)所長のエミリオ・リベロ氏は強みの物流について講演した(注5)。リベロ氏は、国内に広がる鉄道網は南端のモンテビデオ港につながっており、大西洋に面する同港を通じて米国東海岸や欧州、中東、東アジアなどの世界市場にアクセスできる利点があると強調した。

(注1)6月16日の大阪開催は、ウルグアイ外務省、Uruguay XXI、ジェトロ大阪本部が主催した。6月18日の東京開催は、在日ウルグアイ大使館とジェトロが主催した。日本側からは、大阪開催のセミナーに29人、東京開催のセミナーに58人が参加した。

(注2)ウルグアイの立地が強みとなっているFZは国内に12カ所あり、各種免税の恩典を受けて貨物の保管・出荷ができるほか、バックオフィスやコールセンターなどのサービス輸出、製品の製造活動にも利用ができる。

(注3)西澤所長によると、FZを物流拠点として活用する企業は、(1)直接ユーザー、(2)間接ユーザー、(3)預託者の3つの形態に分類され、(3)の場合、法人を設立せずに第三者の物流サービスを利用することが可能。

(注4)荏原製作所は2024年10月に、ウルグアイ国内での販売シェア拡大と周辺諸国への販売ネットワーク強化を目的に、同国のポンプ販売会社「Asanvil S.A.」を買収した。

(注5)テヘラ氏は、同国が経済規模の大きなブラジルとアルゼンチンに隣接していることに触れ、FZを活用したウルグアイの中南米における物流拠点としての優位性を述べた。

(小西健友、古川佳奈)

(ウルグアイ)

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