カンボジア進出日系企業、自動車部品製造や社会課題解決型ビジネスに可能性
(カンボジア、日本)
調査部アジア大洋州課
2025年06月12日
5月29日に開催された「日カンボジアビジネスフォーラム」(注)では、カンボジアのフン・マネット首相の講演に先立ち、2つのパネルディスカッションが行われ、進出日系企業が登壇した。同セッションで日系企業はグローバルサプライチェーン再構築の一環としての自動車部品製造の拡張事例や、社会課題解決型ビジネスを同国からグローバルに展開する事例などを紹介した。
1つ目のパネルディスカッションでは、グローバルサプライチェーン再構築に焦点を当て、製造業にとってのカンボジアの強みや、同国がゲームチェンジャーになり得る要素について議論が交わされた。2013年から同国で生産を拡大してきたデンソーインターナショナルアジアの末松正夫上級副社長は「カンボジアは内燃機関車(ICE)の部品集約の最適地だ」とし、直近ではタイからカンボジアにICE主力製品のラジエーターを移管の上、マレーシアやインドネシア、インド、フィリピンなどへの輸出も進めていると明らかにした。カンボジアはタイのサプライチェーンを活用しやすい点に加え、チームワーク重視で、細かな作業への集中力と忍耐力があるカンボジア人の特徴は、設備集約型の自動車部品製造に適していると話した。
2024年6月に自動車用プラスチック加工製品の製造・販売をする法人を設立したF Plas(Cambodia)の江刺家淳一社長兼最高経営責任者(CEO)は人材面について、「学習意欲が高く、管理層や若年層は英語のコミュニケーションも可能」と評価した。併せて、同氏は「これらの強みは、製造ラインの管理業務にも適しており、高いレベルの管理者を育成していくことがカンボジアにとってのゲームチェンジャーになる」と話した。
ロイヤルグループ・プノンペン経済特区の上松裕士最高経営責任者(CEO)は人材育成に関して、「日本カンボジアデジタル化製造センター(CJDM)で最先端の機械を使用した技術人材の育成が進んでいる」と話した。
2つ目のパネルディスカッションでは、日本の技術を生かした社会課題解決型ビジネスで、カンボジアからグローバル展開する事例を取り上げた。同国でデジタル決済システム「バコン」を導入したソラミツは、同国での実績を踏まえ、他のASEAN加盟国や大洋州の国にも中央銀行デジタル通貨導入の実証実験や提案を進められていると話した。イオンモールカンボジアは、商業施設運営に加え、製造業の事業環境を改善する物流の取り組みを紹介した(2025年3月19日付地域・分析レポート参照)。衛星データと人工知能(AI)技術を使った農地の見える化を進めるスタートアップのサグリは、カンボジア事業の魅力として、稲作面積が広く、メタンガス排出量削減でカーボンクレジット創出のチャンスが大きいと話した。
(注)同フォーラムは、ジェトロ、カンボジア商工会議所(CCC)、日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)、みずほ銀行が主催。進出日系企業によるパネルディスカッションの後、フン・マネット首相らも登壇した。
(庄浩充)
(カンボジア、日本)
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